交通事故の被害者が、後遺障害が残存した結果、通常の自動車では乗ることができない、運転できないという場合は自動車を改造する必要があります。
たとえば、車いすのまま乗ることができるようなものや、通常の自動車は手足をすべて使って運転することになりますが、使用できない手や足を別の機器を使用して運転できるようにする場合などです。
この場合、注意を要するのは自動車そのものの価格は損害としては認められないと言うことです。
つまり、後遺障害に対応する改造済みの新車を購入したとしても、その改造車のベースになる通常の自動車の価格は相手方には請求することはできません。あくまで、改造部分相当額についてのみです。
そして、認められる損害の範囲としては、自動車は定期的に買い換えが必要になりますので、その耐用年数等により、何回の改造が必要かを計算し、損害額を算出するのが通常です。
なお、耐用年数は裁判例によって異なります。これは、個別事件における主張、立証の内容や裁判所の判断が違っているからと考えられます。
○名古屋地裁平成19年10月16日判決は、自動車の耐用年数を6年と認定し、介護仕様車両の価額と通常仕様車両の価額との差額について、6年に一度、平均余命55年間に9回買い換えることを前提に損害を算出しました。
○大阪地裁平成19年2月21日判決は、購入した自動車の特別仕様部分相当額について、自動車の耐用年数が8年であることを前提に、被害者(症状固定時21歳女子)の平均余命64年間に8回の交換を要するとして損害を算定しました。
○大阪地裁平成17年9月27日判決は、自動車の耐用年数を10年として損害を算出しました。
○東京地裁平成13年7月31日判決は、5年ごとに自動車を買い換える前提で損害を算出しました。