交通事故の損害賠償請求は、被害者が症状固定と診断された後に請求するのが通常です。

そして、症状固定時を基準に一括して請求することになりますが、将来の介護が必要とされる場合には、症状固定時を基準に一括して請求することとなります。

将来の介護費用が認められるのは、①医師の指示がある場合、②将来にわたり介護が必要となる場合です。

○1級 遷延性意識障害の場合

名古屋地裁平成23年2月18日判決は、症状固定時21歳の男子大学生の事案について、夜間と休日の一部は母親が介護、平日と母親の休息に必要な年間60日は職業付添人の介護を認め、職業介護人の日額2万円、近親者付添人費用夜間5000円、1日1万円として、母親が67歳以降の37年間は職業付添人1日2万5000円として総額1億5903万円を認めた。

(コメント)一般に労働能力は67歳までが基準とされますので、本判決は母親が67歳までは母親が一定の介護をできることを前提に、それ以後は、母の介護は難しくなることを前提に職業介護人が介護する前提で算定されたと考えられます。

将来の介護費用については、難しい問題も多いのですが、数十年後の将来のことは現時点では予測できないこともあり、フィクションによる計算が大きいと言えます。

なお、介護保険等を利用しているため、現実の出費が現在においては、それほど大きくない場合にも、現在の介護保険制度が将来にわたって維持されるかどうかはわからない事情がありますので、現在は少額で済んでいる場合も、介護保険等を利用しない前提での請求をしていくべきです。

 

○大阪地裁平成22年3月15日判決は、1級の24歳女子について、介護費用として日額1万8000円を58年間分認め、総額1億0172万2653円認めました。

○仙台地裁平成21年11月17日判決は、16歳男子の将来介護費用として、母親が67歳になるまで日額1万5000円、その後は日額2万円を認めました。

その理由の中で、「現時点では法令による公的給付は相当程度に及ぶものの、将来においてもなお係る給付が確定的に存続するか必ずしも明らかではないという事情を考慮に入れると、公的給付の存在を過大に評価するのも相当ではない」として、現時点において公的給付から相当額が支給されたとしても、その金額には拘束されないことを判示しています、