1 被害者 18歳 男子

2 傷害の内容
  左膝開放骨折、右第5中手骨骨折

3 後遺障害の内容
  右第5中手骨変形等(12級)

4 逸失利益に関する判断

加害者側が、別件の交通事故で死亡した場合は、被害者の逸失利益の発生は中断すると主張したのに対し、最高裁は

「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した場合における財産上の損害の額を算定するに当っては、その後に被害者が死亡したとしても、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではないと解するのが相当である(最高裁平成5年オ第527号、同8年4月25日第一小法廷判決・民集50巻5号登載予定参照)。
右のように解すべきことは、被害者の死亡が病気、事故、自殺、天災等のいかなる事由に基づくものか、死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか、交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。
本件のように被害者が第二の交通事故によって死亡した場合、それが第三者の不法行為によるものであっても、右第三者の負担すべき賠償額は最初の交通事故に基づく後遺障害により低下した被害者の労働能力を前提として算定すべきものであるから、前記のように解することによって初めて、被害者ないしその遺族が、前後二つの交通事故により被害者の被った全損害についての賠償を受けることが可能となるのである。」と判示しました。

  
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本判決のポイントは二つあると言われています(北河隆之・交通事故損害賠償法・弘文堂 P173参照)

1つめは、死亡原因が、自殺の場合も継続説をとったこと(つまり、自殺した場合でも生前の後遺障害の逸失利益は加害者に請求できる)
二つめは、 事故と死亡との間に相当因果関係があったときでも継続説を採用するとした点。
(つまり、従前は事故と死亡との間に因果関係があるときは、死亡を前提にした請求をせざるを得なかったが、被害者はどの損害を請求するかを選択できる。後遺障害等級が高い場合は、死亡よりも逸失利益が高いこともある。
死亡の場合は、心因的要因等の減額をすることがあるため)