交通事故の被害にあった場合、入院や手術が必要な傷病の場合は、すぐに入通院をすることが通常でしょう。
そして、いわゆるむち打ち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群など)の症状の場合も、事故直後に一度は病院に行って、医師の診察を受け、必要な検査をすると思います。
ところが、むちうちの場合、たまたま仕事が繁忙期で、仕事が忙しくてどうしても休めない、自宅や職場の近くには整形外科がない、という理由で治療をしないまま、1ヶ月、2ヶ月がすぎ、やはり症状はいっこうに良くならない、医者にかよわないといけない、と言って、治療を再開する人も結構います。
このような場合に問題になってくるのが、交通事故と通院の因果関係です。
被害者本人からすれば、「この事故にあうまでは、こんな症状は一切なかった。だから、事故に遭わなければ、通院する必要はなかった。通院するのは、事故にあったからであり、通院と事故との間には因果関係があるのが当たり前だ」と思うでしょう。
しかし、このような通院の場合、加害者の保険会社は必ず、いったん中断した後の因果関係は事故とは関係がない、治療費は支払わない。と争ってきます。
事故と通院の因果関係があるかどうかは、症状の推移やそれまでの通院の実績、治療を中断したり、再開した経緯などいろいろな事情を考慮されて判断されるものですので、一律に何日中断したら、因果関係がかけるという基準はありません。
ただし、一定期間、治療を中断した後に再開すると、裁判上でも因果関係は否定されます。
長期間にわたって治療を中断後、再開する場合は、後に事故との因果関係が否定される可能性もあるので、健康保険を使って治療することをおすすめします。
健康保険を使えば、もともとの単価が低いことと、自己負担分が低いこともあるので、仮に事故と通院の因果関係が否定されても、自腹で負担する治療費が安くて済みます。
東京地裁平成7年9月6日判決は、治療間隔が10ヶ月以上空いた後の治療について、因果関係を否定しています。