現在は、多くの病院は完全看護となっています。

つまり、看護は病院がすべてやるので、家族の付添は必要ありませんよという建前です。

しかし、現実には完全看護といっても、入院する人の年齢や症状によっては家族の看護が必要な場合も少なくありません。

家族や職業的な付添人が、看護するにあたり、医師の指示があった場合は、損害として認められやすいと言えます。

医師の指示がない場合でも、被害者の年齢や症状によっては認められることもあります。

この場合、職業的付添人が看護した場合はその実費、家族が付き添った場合は1日6500円程度が認められることになります。

入院の場合のみならず、通院する際にも付添が必要となることもあります。

これも被害者の年齢や症状等によって認められるかどうか変わります。

認められる場合は3300円程度認められます。

さらに、退院後に自宅で療養する場合に、自宅において看護が必要なときは症状固定までの付添看護費が認められることもあります。

 

○福岡地裁昭和60年1月28日判決は、7歳の男子が右下腿両骨骨折し、入院した事案で、両親が小料理屋を営んでいたところ、こどもの付添のためにアルバイトを雇ったという事案で、アルバイト料として支払った88万0600円を付添看護費用の代わりの出費として損害として認めました。

○東京地裁平成10年3月25日判決は、22歳男性が胸髄損傷、第6胸椎椎体骨折等を負い、入院を252日間した事案において(後に後遺障害等級1級3号)、完全看護の病院とはいっても、被害者の傷害の程度からすると、近親者の付添が必要であったと認め、入院252日分の近親者付添費として151万2000円を認めました(1日あたり6000円)。

○東京地裁平成10年10月9日判決は、11歳の女子が脳挫傷、外傷性脳内出血等で179日入院した事案(のちに併合6級の認定)において、入院日数のうち101日分について1日6000円の金額を認め、さらに、通院付添費用として1日3000円を実通院日数である35日分認めました。

○大阪地裁平成11年7月13日は、64歳の男性が脳挫傷で1147日間入院した事案において(事故後1147日後死亡)、常時介護をする必要があったところ、妻はすでに死亡しており、子どもは遠方に住んでいるという事情から、職業付添人の看護が相当であったと判示し、1日あたり1万円の1147万円を認めました。

○大阪地裁平成12年4月14日は、74歳の女性が骨盤骨折、左下腿骨折、頭部外傷後せん妄等で入院50日、その後症状固定までの期間の付添看護費として983万7326円を認めました。