1 被害者

23歳・女子・兼業主婦

2 傷害の内容

脾臓破裂、顔面切創、右鎖骨骨折、左第2・5・6・8肋骨骨折等

 

3 後遺障害の内容

脾臓喪失により後遺症等級第8級11号、女子の外貌醜状痕につき第12級14号の併合7級 (顔面の醜状痕は長さが2・5センチメートル以内で幅が0・1センチメートル位の醜状痕が顔面左前額部及び左頬部に数本存在するほか左眉尻下部に粒状痕が存在する)

 

4 裁判所の判断

 

① 逸失利益について

本判決は、逸失利益を887万0168円認めました。

「このような醜状痕が人の精神的・肉体的活動機能を客観的に阻害し低下させるものとは通常考え難く、また、原告の年齢や原告が既婚の主婦であることを併せて考慮すると、本件醜状痕によって原告の労働能力の一部が現に喪失し、或いは将来低下するとは認められない。」

「また、脾臓は生命の維持に不可欠な臓器ではなくこれを摘出しても他の臓器がその機能を代行し特別の支障は生じないと一般には言われているものの、なお、脾臓の機能には不明な点も多いうえ、証拠(証人佐賀)によれば、原告は脾臓の喪失によりしばしば腹痛を訴え、疲れやすくなり、無理ができないことが認められ、原告の脾臓の喪失が、原告の今後の家事・育児その他の労働にいくらかは影響を与えるであろうことが推認されるところであり、脾臓の喪失が労働基準法上の障害等級第8級とされ、その労働能力喪失率も45%とされていること、原告の年齢・職業等を総合すると、原告は脾臓喪失によりその就労可能全期間にわたり少なくともその労働能力の15%を喪失したものと認めるのが相当である。」

 

②慰謝料について 1050万円(傷害分、後遺障害分を一括して認定)

 

5 コメント

本件は、併合7級にもかかわらず、労働能力喪失率は15%と認定されています。

(等級表によれば、8級の労働能力喪失率は45%)しかし、脾臓の摘出が労働能力を減少させるかに争いがあること、12級の外貌

障害の逸失利益は認められるとしても等級表通り認められるのは、よほどの症状出ない限りは難しいことを考慮すると、脾臓の摘出で67歳まで労働能力喪失を認めることで全体のバランスをはかったものと考えられます。