1 被害者

58歳・女子・専業主婦

 

2 傷害の内容

右肋骨骨折、右鎖骨骨折、左撓骨遠位端骨折

 

3 後遺障害の内容

右肩関節の機能障害 12級6号、右鎖骨の変形障害 12級5号、左手関節神経障害 14級9号 併合11級

 

原告の主張は、手話言語能力が失われたのは6級に該当するとして併合5級を主張した。

4 裁判所の判断

① 後遺障害等級について

「原告の実際の手話について、分かりにくくなったとする者がおり、単語につき表現できにくいものや、他の単語表現と紛らわしいものがあること、左手関節、右肩関節にも後遺障害を残し、原告は長く手話をしていると1時間ほどで痛み、疲れが出てくること、手話能力は従前の60%程度であるとの記載があり、これらを総合すると、原告の手話言語能力は後遺障害12級程度の14%程度失われたものと認めるのが相当である。なお、原告の手話を長く見ていると、慣れてくるため手話が成立することがあるが、手話通訳者が通訳できているからといって(たとえば、平成19年3月30日の記載)、原告の手話について後遺障害を否定するものではない。

そして、その他の原告の後遺障害等級と併せると、手話の障害の12級相当の障害

が増えるものの、併合11級となり、等級に変わりはない。」

 

② 逸失利益について

本判決は、逸失利益を475万3357円認めました。

「原告は、前記のとおりの後遺障害を残し、症状固定時60歳であり、家事労働につき左手関節部の疼痛があり、左手で重いものが持てない、フライパンを左手だけでは使えない、包丁が使いにくい、更衣時右鎖骨疼痛がある、更衣時左手は使えない、タオル絞りが出きない、ビン、缶のふたが開けられない、寒冷時に右鎖骨・肩甲部、左手関節の疼痛がある、右肩の違和感がある、左手で右手指の爪は切れない、受傷前はバドミントン、ウォーキング、スキー、水泳をやっていたが、現在はしていない、左手で食器把持は困難軽度、手話での会話に支障があるという状態である。そして、鎖骨変形は、鎖骨骨折によるものであり、更衣時あるいは寒冷時に鎖骨に疼痛が残り、家事労働への影響を否定することはできず、11級の20%の労働能力喪失率を認めるのが相当である。」

③ 後遺障害慰謝料 420万円

 

5 コメント

本件は、裁判所は原告の手話言語能力の低下により12級相当に該当することを認めました。しかし、自賠責の等級認定ルールは、12級以上のものが2つ以上ある場合は、重い方の等級を一つ繰り上げるのですが、12級がすでに2つあっため、繰り上げは11級となるので、手話言語能力低下の部分は逸失利益等に影響しませんでした。(12級が2つあるときは、併合11級になります。3つあっても、さらに一つ繰り上げて10級にはなりません)