1 被害者 50歳 兼業主婦(看護師)

 

2 傷害の内容

左肩鎖関節脱臼、左胸鎖関節脱臼、左第2、3、4、10肋骨骨折、左第4、5中足骨骨折

 

3 後遺障害の内容

自賠責は神経症状として14級との認定。裁判所は12級と認定した。

「後遺障害の程度について判断するに、等級表12級5号「鎖骨の著しい変形」の後遺障害に該当するためには、鎖骨の変形が外部から想見できる程度であることが必要であると解されるところ、前記のように、原告の鎖骨の変形はレントゲン撮影を待つまでもなく、外観から素人目にも視認可能であって、その障害は自動車保険料率算定会が認定する等級表14級にとどまらず等級表12級5号に該当するものと認められる。

原告の主張する左肩の運動障害及び神経症状は、鎖骨の障害に伴って生じたこれ

と1個の病症と把握できるから、包括して鎖骨の変形による等級表12級5号によ

るべきものである。」

 

4 裁判所の判断

 

①逸失利益について

裁判所は逸失利益を506万7226円認めました。

「前記認定の原告(症状固定時52歳)の障害の部位、程度、特に原告の鎖骨の障害は、単なる奇形にとどまらず、肩関節の屈曲障害、神経症状を伴っていること、原告の職業、性別、年齢等を総合し、自賠及び労災実務上等級表12級の労働能力喪失率が14%と取り扱われていることは当裁判所に顕著であることからみて、原告は本件事故による後遺障害によってその労働能力の14%を喪失し、障害の性質から見て、これは生涯継続するものと認められる。

そこで基礎収入を前記329万6100円とし、就労可能年齢を67歳としてホ

フマン方式により中間利息を控除して逸失利益を算定すると前記金額が求められる。」

 

5 コメント

原告の鎖骨の変形の状況から裁判所は12級を認定し、67歳までの15年間について14%の労働能力喪失率を認めました。なお、本判決はホフマン方式により中間利息を控除していますが、現在はライプニッツ方式が基本となります。