むちうちと交通事故

1 交通事故とむちうち

いわゆるむちうち(むち打ち、鞭打ち、ムチウチ)とは、後から追突された場合等に、体が前に押し出されるのに、頭はそのまま残ろうとするので後に大きく振れ、反動で前にのめるという動きがあった場合に首周辺の組織に損傷を起こすものを言います。

医師の診断名は、外傷性頚部症候群、頚椎捻挫、頚部挫傷、頚椎神経根症、頸椎椎間板ヘルニアなどがあります。交通事故の中ではもっとも多い症状です。自賠責が認定する後遺障害のうち、約56%は14級ですが、その多くはいわゆるむちうちとな っています。(なお、腰部の場合はむちうちではありませんが、生じる症状や対処方法はむちうちと似ている部分が多いです)

2 むちうちの症状

肩から手指にかけてのしびれ、痛み、だるさ、重い感じ等の症状が出ます。首が動かない、ひどい肩こりのような症状もあります。

3 むちうち症状で該当しうる後遺障害等級

むちうちは自賠責の後遺障害等級にはあたらない、という人がいますが、それは正しくありません。

14級 「局部に神経症状を残すもの」または、12級「局部に頑固な神経症状を残すもの」のいずれかになる可能性があります。

もちろん、むちうちの圧倒的大多数は、2,3ヶ月の治療で終了し、後遺障害を残しません。半年以上整形外科に通院しても症状が残るような場合が、後遺障害等級に該当しうるものといえます。

14級と12級の違いは、言葉の上では「頑固な」という言葉があるかどうかですが、現実には全く異なります。

12級はMRI等の画像から自覚症状が医学的に「証明」できるもの
14級は画像等からは証明できないが、「推定」できるもの

という大きな違いがあります。つまり、痛みやしびれなどの症状が仮に同じ場合でも、その症状がどこから来ているのか、「証明」できなければ、12級にはならないということです。

いわゆるむちうちで12級が認定されるケースは14級と比較すると圧倒的に少ないと言えます。

現実には、画像から症状が説明できる場合がすべて12級になるわけではありません。むしろ、14級になることが多いようです。

特に椎間板ヘルニアは、年齢変性と言って、年を重ねる毎に誰にでも現れる症状なので、画像から椎間板ヘルニアが認められるからといって12級になるとは限りません。

自賠責の認定は、ブラックボックスのように外部からはわからないことが多く、12級と14級の違いは言葉の上ではわかりやすくても、現実には明確に区別することは困難です。

ただし、いわゆるむち打ちで12級が認定されるケースは、症状が極めて重い人であることが多いようです。

後遺障害等級に認定されるには、初期症状から症状固定までの症状の一貫性、連続性は重視されるといわれています。

また、治療期間や医師に通院した回数も重要であるといわれていますが、同じ通院期間でも14級に認定されるケースとされないケースがあり、必ずしも決め手になりません。

いずれにしても、14級は一番下の後遺障害等級ですが、これが認められるのは、むちうちの中でも相当重い症状の場合であるということです。

 

4 治療上の注意

整骨院に通うか、整形外科に通うかは、治療という点から見るとどちらの方が良いとは言えません。

ですが、後遺障害獲得を目指すのであれば、定期的に整形外科に通院しなければなりません。

整骨院に通院する場合は必ず整形外科と併用してください。これは、単純に「権限」の問題です。後遺障害等級の申請をする際には医師に「後遺障害診断書」を記載してもらう必要があります。

今までほとんど通院していない整形外科に後遺障害診断書の作成をお願いしても断られる可能性が高いです(患者を診ていないので書けないのはある意味当然かもしれません)。

症状固定時に医師に書いてもらう後遺障害診断書は「医師」でなければ、書くことができませんので、整形外科に通院していない限り、そもそも後遺障害診断書を作成してもらえないと言うことになります。

整形外科に通院すると行っても、リハビリであれば、外来のように長時間待つ必要もないので、1回あたりにかかる時間は15分から30分程度ですので、整骨院とそれほど変わりません。

リハビリをきちんと行ってくれるような整形外科に通院するか、リハビリは整骨院ですることにして、定期的に整形外科の医師の診察を受けることにすることが重要です。

それから、むちうちで、吐き気やめまい、耳鳴り等の症状が出ることがありますが、これはバレリュー症候群といわれるものである可能性があります。ペインクリニック(麻酔科)に行って、神経ブロック注射をすることにより症状が良くなることもあると言われています。

麻酔科の医師に原因や症状を伝えて相談してみてください。

ひとくちに、むちうちと言っても、それが1,2ヶ月で治るものか、半年以上も通院しても症状が残るものなのか、最初に通院を始める時点ではよくわからないはずです。3ヶ月程度で完全に治ってしまえば、それが一番よいのですが、半年程度通院しても後遺障害が残るような場合に、通院の仕方がよくなかったことで、本来は後遺障害等級が得られたかもしれないのに、得られなくなったという結論はさけたいものです。

そのためには、整形外科に定期的に通院することが重要になります。

 

5 むちうち-症状固定時に必要な検査

むちうちで後遺障害等級を獲得するためには、医師に後遺障害診断書に必要な検査結果をきちんと書いてもらう必要があります。

◎スパーリングテスト

頚部に神経根の障害があるかどうかを調べる検査です(youtube で スパーリングテストで検索すると、どのような検査かわかりやすいです。)

簡単に説明すると、人為的に痛みやしびれを起こしやすい状況を作って、痛みやしびれの状況を再現するものです。

座った状態の患者の後に医師が立って、患者の首を後に倒し、かつ左右方向に曲げます。

力を加えるとしびれや放散痛がでると、神経根に障害があるのではないか、ということがわかります。

*医師の中には、スパーリングテストは、症状を悪化させる危険のある検査だからやらない方がいいという方もいらっしゃいます。

この検査が唯一の検査ではありませんので、通院している医師の考え方に従ってください。

ジャクソンテストもスパーリングテストに似た検査です。(これもyoutube 検索してください)
◎握力検査

症状の重い人は物を強く握ることができないので、本来は有効なはずですが、「演技」ができる可能性があるためか、あまり重視されないようです。

◎筋萎縮検査

筋肉が動くのは脳からの指令を受けて、神経をとおって筋肉に伝わり動きます。

筋肉をとおっている神経に麻痺がある状態が続くと筋肉は萎縮します。

両方の腕の上腕と前腕の太さを測定し、比較することにより、有意な差があれば、神経麻痺があることの証拠となります。

◎深部腱反射

腕の腱をゴムハンマーでたたき、どのような反応があるかによって、どこに異常があるかわかります。

以上のような検査がありますが、重要視されるのは、ごまかしが効かない検査のようです。つまり、深部腱反射、筋萎縮検査等は必須です。

スパーリングテストや握力も参考の資料にはなりますし、簡単にできる検査でもあるので、検査を受けた方が良いと思われます。

 


初回相談料・着手金無料ですので、お気軽にご相談ください。0120-552-451

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