交通事故の被害者が男性であるか、女性であるかにより損害の算定方法が違う場合があります。

現実に働いている人の場合は、休業損害や逸失利益の算定においては、基本的に現実の収入を前提にしますので、男性か女性であるかの違いはありません。

しかし、算定方法が違う場合があります。

それは、休業損害や逸失利益の算定において、「賃金センサス」を使用する場合です。

賃金センサスは、労働者の平均賃金ですので、男女により異なり、男性の方が金額が高いのが一般です。これは、子育て世代の女性が無職であったり、パート収入しか得ていない等の事情があります。

○年少者の場合

一般的には、働くことのできる年齢は中学校を卒業した後になりますが、多くの人は高校や大学に進学します。

小学生や中学生あるいは高校生や大学生が交通事故の被害者になったとき、逸失利益の算定は賃金センサスをもとになされます(まだ働いていないので、現実収入はわからない)。

未だ仕事に就いていない人の場合、

男子は男子の学歴計賃金センサスを用いて計算します(平成22年の場合、523万0200円)

女子は男女学歴計賃金センサスを用いて計算します(平成22年の場合、466万7200円)

そうすると、男性の方が女性よりも高い逸失利益が計算上でます。

この差別は不合理ですが、現状の実務においては、特に修正等はされていません。

○年少者死亡の場合

死亡の場合も同じように男子は男子の学歴計賃金センサス、女子は男女学歴計賃金センサスを用いますが、若干事情が異なります。

つまり、生きていれば得た収入はまるまる残るわけではなく、生活費がかかったはずである、亡くなったのだから本人の生活費はかからないと言うことで生活費が控除されるのです。

その控除率が男性の場合は基本的に50%であるのに対して、女性の場合は30%程度となります。

したがって、控除される割合が男性の方が高いため、計算のベースとなる平均賃金センサスが男性の方が高くても、ある程度バランスの取れる結論となります。

○高齢者の場合

高齢者の場合は、女性の方が損害額が大きくなる可能性があります。

これは、女性は70歳でも80歳でも家事に従事している人がいるため、働いていることになりうるからです。

もちろん、男性も家事に従事していれば、同様になりますが、一人暮らしの男性で家事をする人は多いと思いますが、家族の誰かのために家事をする人は少ないのが現状でしょう。

そうすると、男性は無職となり、逸失利益は年金くらいしかないが、女性は年金に加えて、家事従事者としての逸失利益が観念できるので、損害額はあがる可能性があります。

○顔面の醜状障害について

醜状障害については、かつては、同様の傷が残った場合でも、女性の方が男性よりも高い東急が認定されていました。

しかし、平成22年5月27日の京都地方裁判所の判決により、労災の後遺障害等級が男性と女性で著しく異なるのは男女平等を定めた憲法に違反するとして、無効とされました。

自賠責等級は労災の等級認定基準を借りているのですが、厚生労働省は労災の基準を見直し、結果的に自賠責の等級も変更されました。