交通事故の被害者が死亡した場合、葬儀費用はどの程度損害として認められるかについては、
裁判基準では原則として150万円(ただし、現実の支出額が下回るときは支出額)となります。
現実にかかった葬儀費用が高くても全額、加害者に請求できるわけではないと言うことです。
人にはいずれ必ず死が訪れます。ですから、葬儀費用はいつか支出するはずの費用を前倒しで支払ったということになりますが、「現時点で」葬儀をしなければならなかったのは交通事故があったから、ということになりますので、一定程度葬儀費用は損害として認められるということです。
ただし、葬儀費用として認められないものとしては、弔問客に対する返礼品があります。
これは、通常弔問客は香典を持参するので、それに対するお返しとしての返礼品は加害者に請求できないと言うことが根拠でしょう。
一方で、弔問客から受け取った香典が合計でいくらであるかは関係ありません(そもそも加害者に関係のないことなので、金額を開示したりもしません)。
弔問客接待費も認められませんが、少額の弔問客に対する飲食費等は認められる場合があります。
また、墓石や仏壇の購入費用についても認められる場合がありますが、被害者の年齢等にも関係します。
○東京地裁八王子支部平成14年9月5日判決は、被害者の遺族が訴訟で主張した葬儀費用等の支出に対し、加害者がそのまま認め、「自白が成立しているとしても、その損害が本件事故と相当因果関係のある損害であるか否かについては、自白の対象とはならず、裁判所の事由心証に基づく判断に委ねられるものと解される。」と判示して、200万円の支出額に対して120万円を損害と認めました。
○大阪地裁平成14年5月14日判決は、被害者側と加害者側の間において、葬儀費用を支払うとの発言があった事案において、葬儀の支出費用のうち300万円を損害と認めました。
○大阪地裁平成12年8月25日判決は、20歳男子が死亡した事案において、532万8101円の葬儀費用の請求に対し、本件と相当因果関係がある損害は180万円と認めました。
○高知地裁平成12年5月18日判決は、15歳の女子高校生2人が被害者となった事案において、「本件事故は悲惨なものであるうえ。社会の耳目を集めたこと、被害者らが高校生であったことも併せて考慮すれば、同人らの葬儀はいきおい大規模なものにならざるを得ず、その費用についても、一般の葬儀に比べ必然的に高額となるのもやむを得ないというべきである」と判示し、損害として、各人につき、185万1895円、212万9393円をみとめました。
○東京地裁平成11年12月27日は、77歳の会社役員が死亡した事案において、葬儀費用1340万円のうち、事故と相当因果関係を有するのは150万円であるとしました。