会社員のような給与所得者の場合、休業損害額の算定方法は
休業により現実に減額された金額が損害となるのが原則です。
ただし、いわゆる残業代(時間外労働賃金)は、ある特定の月の給与だけを見ても変動があり得るため、事故前3ヶ月分の給与額を3ヶ月で割り、1日あたりの賃金を出すのが通常です。
○収入額は、いわゆる手取額ではなく、税込みの金額です。
○有給休暇を利用した場合、現実の収入源がなくとも損害として加害者に請求できます。
これは、本来、被害者は交通事故の被害にあった治療という不本意な理由で自由に使えるべき有給休暇を使わざるを得なかったということになりますので、有給休暇を使った日数について、金銭に換算して損害賠償請求ができます。
○ 欠勤のために昇給や昇格に影響があった場合、賞与の算定において影響があった場合も、理論的には加害者に損害を請求できますが、証明できるかどうかという問題があります。
○ 休業中、昇給・昇格があった場合は、その昇給後、昇格後の賃金を前提に休業損害を算定します。
○休業損害が認められるのは、傷害が治癒したとき、または症状固定時までですが、現実に休んでしまえば、必ず休業損害が認められるとは限りません。症状の内容・程度からどのくらい休むのが妥当かどうかという判断がなされます。また、1日全体について休業損害が認められない場合も、半日分、3割分という風に時間が経過するにつれ、割合的な休業損害が認定されることもあります。
○東京地裁平成16年4月14日判決は、事故後に使用した有給休暇46日分について、110万3054円を損害として認めました。
○東京地裁平成16年12月21日判決は、事故当時32歳の男子銀行員について、症状固定時まで3年かかったことから、毎年5%給与が上昇する推定計算を行い、休業損害を算定しました。
○東京地裁平成14年5月28日は、交通事故による傷害のため、欠勤により退職せざるを得なかった事案について、治癒後に直ちに就職できるものではないとして、治癒後3ヶ月分の休業損害を認めました。
○東京地裁平成14年10月8日判決は、九ヶ月間会社を休んだ事案について、労働能力を50%喪失したにすぎないとして、半分の金額を休業損害と認めました。
○大阪地裁平成13年12月20日判決は、症状固定時までの522日間について、まったく就労することができなかったとして、1ヶ月あたり59万5000円の給与の他、年70万円のボーナスも加味して1日あたりの休業損害額を計算しました。