1 被害者 事故時20歳女性(症状固定時は22歳、大学院生)

2 傷害の内容
 
  左踵骨骨折、左距骨骨折、左足関節内果骨折、左足関節外側側副靱帯損傷

3 後遺障害の内容  10級11号
  歩行後の疼痛、ランニングができない、軽度の跛行がある、階段、坂道の歩行が困難等の自覚症状あり、左下腿に筋萎縮、足関節の可動域制限、階段を降りるときや傾斜面を下るときに不自由があり、一日中歩くと左足首が痛んでくる等と訴えており、また、踵のない靴を履くと運動が制限されるため、踵のない靴を履くときや室内でスリッパを履くときには踵に装具を付けている。

4 逸失利益に関する裁判所の判断
  「原告は現在のところ将来の職業は未定であるが、中学と高校の社会科の教員免許を持っており、就労の意思及び能力があることは認められるところ、大阪教育大学大学院卒業予定の平成10年3月から67歳に至るまでの42年間は就労が可能であり、本件事故に遭わなければ、右期間中平成6年賃金センサス・産業計・企業規模計・学歴計・25ないし29歳の女子労働者の平均年収である339万9500円を下回らない収入を得ることができたものと認められる。そして、原告は、前記後遺障害により右期間を通じてその労働能力の27%を喪失したものと認められるから、右収入を基礎に右期間に相当する年5分の割合による中間利息を新ホフマン方式により控除すると、本件事故による原告の逸失利益は次のとおり1786万8995円となる(円未満切捨て)から、原告は、後遺障害による逸失利益として、少なくとも原告主張額である1628万0563円の損害を受けたものと認められる。

  「被告は、原告に足関節になんらかの後遺障害が残ったとしても、それは労働能力の27%も喪失するような重篤なものとは考えられないと主張するが、確たる根拠もない主張であり採用できない。また、被告は、原告が将来右障害の影響のない職種を選択すれば労働能力の喪失はないともいえると主張するが、右のように職種の選択の範囲が制限されること自体が労働能力の喪失にほかならないのであって、被告の右主張もまた採用できない。」

5 後遺障害慰謝料 440万円

6 コメント

  保険会社の主張として、職業によっては、その部位に障害があっても仕事の妨げにならないという主張がされることがありますが、本判決は「職種の選択の範囲が制限されること自体が労働能力の喪失にほかならない」として、そのような主張を退けました。
  なお、平成11年の三庁共同提言以降は、中間利息の控除はホフマン方式ではなく、ライプニッツ方式によることとされています。