1 被害者 男子・事故時の年齢不明(症状固定時29歳)

2 傷害の内容
右大腿骨骨幹部骨折、同部遷延治癒骨折、左大腿骨遠位端開放骨折、左第2、3肋骨骨折、前十字靱帯不全損傷、肥原性瘢痕(左膝関節部、右大腿部)、前額部裂創、全身打撲

3 後遺障害の内容
 骨盤骨の変形傷害12級5号、顔面部醜状障害12級13号、右下肢2センチ短縮13級4号、左膝関節痛の神経症状  14級10号、右下肢、左下肢醜状障害14級5号
併合11級

4 裁判所の判断

①逸失利益(将来分)
「原告に生じた後遺症のうち、顔面部醜状障害、右下肢、左下肢醜状障害については、労働能力の喪失に影響を与える点につき、これを具体的に認定するに足る資料はない。
 骨盤骨の変形障害、右下肢2㌢短縮、左膝関節痛の神経症状の後遺障害については、現段階で収入の減少に結びついていることの証明はない。しかし、健常状態での収入を維持するために相当な努力を用いていること(原告本人尋問)、必ずしも将来において健常状態と同等の収入を得られる保障はないこと、右各後遺障害ことに骨盤骨の変形障害、右下肢2センチ短縮による労働能力喪失の影響が一定の期間で残存しなくなるとは断定できないことなどから、67歳まで14%の割合による労働能力の喪失を認めるのが相当である。
 したがって、これらを前提に原告の逸失利益を計算すると、基礎収入を平成10年賃金センサスの企業規模計医師の全年齢平均賃金を上回らない原告の主張額である1199万0100円とし、原告の労働可能期間(38年間)につき、ライプニッツ方式(係数16・8678)により中間利息を控除した、2831万4525円(1円未満切り捨て)となる。」

②逸失利益(卒業が遅れたことによる分)
 「平成10年賃金センサスによれば、医師の初任給は月給21万1000円であることが認められる。よって、原告が1年間卒業することが遅れ、得られなかった収入として、21万1000円の1年分である253万2000円につき相当性を認める。」

③慰謝料 660万円(後遺障害分と入通院分を一括して認定しています)

5 コメント

併合11級の労働能力喪失率は20%です。しかし、本件は14%と認定しており、一見低めに認定したかに見えますが、本件は醜状障害について逸失利益を認定していないこと、変形障害は労働能力喪失率をそのまま認められるとは限らず、また、労働能力喪失期間が短く認定されることもあることを考えると、14%を67歳まで認めているのはバランスがとれていると見ることもできます