郡山タワー法律事務所の弁護士三瓶正です。
交通事故の被害者が、損害賠償を得るための手続は、大きく分けると5つあります。
1 交渉
これがもっとも簡単でわかりやすいと思います。
加害者側の保険会社と話し合いで解決する手続です。
基本的には、加害者の保険会社がいろいろとやってくれますので、被害者としては一見すると楽です。
ですが、交渉の問題点は、終始、加害者側の保険会社のペースで主導され、もともと一生に1回遭うかどうかの交通事故のために
勉強をしている被害者はいないでしょうから、圧倒的な知識差によって、保険会社の言いなりになってしまい、本来得られるべき
「適正な損害賠償」を受けることのないまま、かなり低額で話しがまとまりかねないということです。
2 交通事故紛争処理センター
財団法人交通事故紛争処理センター(略称で「紛セン」とか「紛セ」といいます)を利用して、「裁判基準」の解決を目指します。
裁判ほど長引かないので、14級や12級などの後遺障害の場合の解決に適しています。
基本は、話し合いですが、紛争処理センターが提案した内容に保険会社が同意しない場合は、「裁定」をすることにより、
その内容に保険会社が拘束されることがあります(損保系の保険会社のみ)。
ただし、過失割合や因果関係について争いがある事案は訴訟に移行される可能性があるので、向かないと言えます。
自分でやることも不可能ではありませんが、損害論の細かい話しになるときに、なかなか難しいかもしれません。
3 日弁連交通事故相談センター
日弁連交通事故相談センターも2の交通事故紛争処理センターと基本的には同じです。
運営主体が日本弁護士連合会である点が違うことと、2で述べた拘束力が生じる「相手方」が変わります。
日弁連の場合は、JA共済連、全労済等の共済系について、拘束力が生じますが、逆に損保会社に対しては拘束力は生じません。
ですから、2と3の使い分けは、相手の保険会社がどこか、によります。
4 民事調停
裁判所を利用した話し合いの手続です。
証拠関係がそろっていなくて、裁判では厳しいときに利用します。あるいは、どうしても裁判はいやと言う人が、裁判所を通じた話し合いをするために適しています。
ただし、交通事故の場合は、2,3があるので、民事調停の利用価値はあまり高いものではありません。相手の保険会社には出頭する義務はないし、拘束力もありません。
5 訴訟(裁判)
いうまでもなく、裁判所を利用して「判決」という強制力をもった手続で解決するものです。
ある程度高額な請求をする場合や難しい問題点を含む場合には、裁判にする必要があります。
保険会社は交渉のみでは、高額な金額を提示してくることはまずありません。
裁判にした場合でも、「和解」といって話し合いで解決できることもあるので、必ず時間がかかるというわけでもありません。
また、裁判にすることのメリットは、弁護士費用として損害の10%をプラスしてもらえること、遅延損害金といって年5%の利息をつけてもらえることがあります。
(ただし、和解の時は弁護士費用と遅延損害金については、ある程度譲歩することになります。)
全体的にみて、どの制度が一番良いかというのは、難しい問題です。
その事件の内容、損害の金額、時間、かかる費用を中心にして、戦略的に考えていく問題です。