交通事故の被害者が複数の病院に通院することはよくあることです。
例えば、鎖骨を骨折し、腰椎捻挫の症状があり、顔面に傷があるという場合、病院の整形外科に入院し、その後腰椎捻挫のリハビリのために整形外科に通院し、顔面の傷の手術や治療のために形成外科に通院する場合は当然に複数になります。
このような場合は、複数の医療機関に入通院することに何の問題もありません。
当然に必要な治療といえるからです。
しかし、一つの症状であっても、複数の病院や医院に通院することもあります。
例えば、頚椎捻挫で最初は大きなA病院に行って、その後はB整形外科に通院し、その後C整形外科に転医するような場合です。
これ自体も決して問題があることではありません。
最初は検査の設備が整っている大きな病院に行き、その後のリハビリの時点では小さな整形外科に通院する方が、待ち時間が少なくて済む、自宅や職場から近いクリニックであれば、通いやすい面があるからです。また、評判を聞いて、良いと言われるクリニックに通院したいと言うこともあるでしょう
しかし、複数の医院に通院する場合も、もともと事故で負った症状との兼ね合いで、度が過ぎると問題になることもあります。
東京地裁昭和49年12月29日判決は、5つの病院に入通院を繰り返した事案ですが、判決は、被害者の治療経過に照らすと、必要以上の転医を繰り返し、その結果、諸検査が重複して行われ、治療費が必要以上に拡大し、結果的に治療が長期化していることは否めない。
として、損害額算定の際に不利益に扱っています。