会社役員が交通事故の被害者になった場合に、一定期間就労が不可能になった場合には、

役員報酬を労務提供の対価部分と利益配当部分にわけて、労務提供の対価部分については休業損害と認められます。

会社が、現実に役員が休業しているにもかかわらず、決められた役員報酬をその額面どおり支払っていた場合には、本来、当該役員の報酬が減額されるべきであるにもかかわらず、その分を会社が肩代わりにして支払ったこととなるので、会社が加害者に対し、休業損害相当分の損害賠償請求ができます。

ただし、この場合も、労務提供の対価部分のみとなり、その具体的な割合は会社の規模、営業状態、役員の職務内容、報酬額、他の役員の職務内容、報酬額、従業員の職務内容、給与額等を考慮して定められます。

たとえば、会社役員といっても、ほとんど仕事をしていなくても報酬をもらっている場合は、労務対価部分が低く認定されることになります。

 

○東京地裁平成6年3月25日判決は、休業日数23日の会社役員について、会社がその報酬を減額しなかった場合に、年間報酬額720万円のうち、9割が労務対価部分であるとして、648万円を基礎に1日の賃金を算出し、23日分について会社の損害を認めました。

○大阪地裁平成6年5月12日判決は、月収150万円の会社役員の休業損害について、労働の対価分は7割であるとして、月額105万円を基礎に1日の賃金を算出し、会社の損害をみとめました。

○千葉地裁平成6年2月22日判決は、月額報酬100万円の会社代表取締役について、個人会社え職務内容も肉体労働が多いことなどを理由として、役員報酬全額を労務提供の対価として損害を認めました。