1 被害者 17歳 男子 (事故当時)
2 傷害の内容
右腓骨開放骨折、右下腿挫滅創
3 後遺障害の内容 右足関節の用廃(8級7号)、醜状障害(12級)
併合7級
4 逸失利益の判断
裁判所は1099万6850円を認定しました。
「原告は本件事故により併合7級という相当重い後遺障害が残ったが、原告は、大学卒業後も資格を目指して勉強し、数年収入は得られないが、いずれ資格を取得すると、後遺障害による支障が相当残るものの、原告の収入にはあまり影響がないと予測されることや後遺障害の内容、程度、年齢等を考慮すると、平成6年4月から67歳までの44年間、15パーセント程度の労働能力を喪失したとみるのが相当である。そこで、前記の原告の年収319万8200円を基に、ホフマン式計算法により中間利息を控除して、原告の逸失利益の現価を求めると、次のとおり1099万6850円(円未満切捨)となる。」
5 就業遅れによる損害
319万8200円
「原告は、平成2年4月に●大学法学部に入学し、平成6年3月に卒業したこと、原告は、本件事故による後遺障害により長時間の歩行が困難なため、通常の就職をしないで、現在、資格試験の取得を目指して勉強していることが認められる。右認定と前記認定によれば、原告は、本件事故にあわなければ、平成元年4月に大学に進学し、平成5年4月から就職し、相当の収入を得られたものと推測できるから、1年間就業が遅れたことによる損害を認めるのが相当である。
すると、原告主張の平成4年賃金センサス産業計・規模計・男子労働者・新大卒による年収319万8200円が相当な損害というべきである。」
6 コメント
本判決では、事故のために高校を留年することになった結果、大学に行くのも一年遅れたため、就職も一年遅れたとして賃金センサスで1年分の約320万円を損害として認めました。
事故と就業が遅れたことについて相当因果関係が認められれば、損害として認められますが、事故前の本人の成績等もふまえての判断であると考えられます(大学進学のために浪人する人もいることを考えれば、必ずしも認められやすい損害とはいえません)。
逸失利益の喪失率は、7級の場合56%ですので、右足関節の用廃があるにもかかわらず、15%しか認められていないのは低すぎる感があります。資格試験の勉強をしていたと言っても、他の職業に就く可能性も十分あることからは疑問が残ります。
ただし、本判決は後遺障害慰謝料を1100万円と高額に認めている点でバランスをとったと思われます。