1 被害者

32歳・男子・会社員

 

2 傷害の内容

 

3 後遺障害の内容

後頭部から頸部の痛み、左肩から上肢、手指の痛み等の神経症状

4 裁判所の判断

①ヘルニアと事故との因果関係

「頸椎椎間板へルニアは、経年性の変異によるもので、その意味では本件事故以前から存在したといえるが、本件事故に遭うまでその症状が発現していたことを窺わせる証拠はないから、原告の頸部に関連する症状は、経年性の変異による椎間板ヘルニアが存在するところへ、本件事故による外力が加わり、症状が発現したと認めることができる。したがって、本件事故と椎間板へルニアによる症状の発現については、本件事故と相当因果関係を認めることができる。」「右のとおり、第五、第六頸椎の椎間板ヘルニアは本件事故の外力により生じたものではないとしても、その症状の発現は本件事故によって生じたものであるから、原告に残存した症状(後頭部、後頸部の痛み、左肩から上肢、手指の痛み、しびれがあり、力が入りにくいなど)は、後遺障害として本件事故と相当因果関係がある。

そして、その程度については、自賠法施行令2条別表第14級10号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する旨の自動車保険料率算定会の後遺障害認定が存在し、症状の内容に照らせば、特にこの認定に疑問はない。」

 

②逸失利益についての判断

裁判所は逸失利益として156万3779円を認めました。

 

「原告の後遺障害の内容及び程度、頸椎椎間板ヘルニア自体は経年性の変異に基づ

くものであることを総合すると、原告は、症状固定時から5年間にわたり、平均して5%の割合で労働能力を喪失したと認められる。」

③ 慰謝料 200万円(傷害分、後遺傷害分一括)

 

5 コメント

本件事案のような事例はよくあります。本判決は、加齢による退行変性によりヘルニアとなっている場合でも、現実に生じた症状そのものが本件を契機に生じているから、被害者の症状と本件事故との間には因果関係が認められると判示しました。