交通事故の被害にあって、顔に傷が残った場合、その傷が後遺障害と評価されることがあります。
従来は、顔面の醜状痕の後遺障害は、男性と女性の場合とで、自賠責の等級認定に大きな差がありました。
例えば、顔に7センチの線状の傷跡が残ったという場合、男子の場合は12級、女子の場合は7級という認定でした。
7級と12級の違いは、慰謝料だけを見ても7級は1000万円、12級は290万円とかなり大きな差が認められます。
さらに、「逸失利益」の算定においては、7級の労働能力喪失率が56%、12級の労働能力喪失率が14%ですから、
損害額の計算をすると、最終的に数千万円単位で変わってきます。
ここまで大きな差を認めることは、憲法14条1項に定める男女の平等に反するのではないかが裁判で争われ、
京都地方裁判所平成22年5月27日判決は、ここまで大きな差を設けるのは憲法違反として、労災の認定を無効と判断しました。
自賠責の基準も改正され、平成22年6月10日以降に発生した事故については、男女関係なく同一の認定がされることとなりました。
なお、最初の例に挙げた顔面に7センチの傷跡が残ったと言う場合は、現在は9級との認定がされます。
平成22年6月10日前に発生した事故について、男子の場合は12級という低い認定がされたままになってしまいますが、これは裁判で9級を主張して
争うほかありません。