1 被害者 22歳・女子(症状固定時25歳)
2 傷害の内容
頸椎捻挫、右肩打撲、外傷性胸郭出口症候群
3 後遺障害の内容
胸郭出口症候群 12級12号
4 裁判所の判断
① 将来の逸失利益について
「原告には、左側頸部痛、頭痛、左胸・背部痛・腋窩部痛、左上肢しびれ等の神経症状が残存しているところ、これらは胸郭出口症候群に基づくものと認められ、自算会が認定したとおり、原告の後遺障害等級は12級10号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものと認めるのが相当である」。「原告の神経症状については心因的な影響があるものと推認されることなどを総合考慮すると、原告は、大学卒業時(26歳)から15年間にわたって、その労働能力を14%喪失したものと認めるのが相当である。」
として、後遺障害の逸失利益として564万2513円を認めました。
② 大学留年による逸失利益
本判決は、原告が2年間留年したのは本件事故と因果関係があるとして、604万4400円の逸失利益を認めました。
③ 後遺障害慰謝料 290万円
④ 症状固定後、一定期間の治療費を認めたが、将来分の治療費は否定しました。
5 コメント
胸郭出口症候群について、本判決は内容を簡潔に説明しています。
「胸郭出口部で神経や血管の通り道を囲む壁となる組織には、骨では鎖骨や第1肋骨、
筋肉では頸椎から発して前内方へ斜めに走って第1肋骨や鎖骨に付着する前・中・後
斜角筋、鎖骨のすぐ下を走る鎖骨下筋、もう少し末梢の腋窩に近い部位を横切る小胸
筋等があり、これらの組織に起こった種々の先天的・後天的異常により、その通り道
が狭められて、血管や神経が圧迫された結果、上肢に血管障害(冷感や疼痛などの動
脈性血行障害、浮腫や静脈怒張などの静脈性血行障害)や神経障害(しびれや知覚鈍
麻や筋力低下等)が発生したものを総称して、胸郭出口症候群という。
なお、本判決は労働能力喪失期間を15年と認定していますが、症状の重さを考慮していると考えられます。12級の神経症状の場合は、通常は10年となります。