1 被害者
49歳・女子・主婦
2 傷害の内容
右大腿骨開放性遠位端粉砕骨折、右膝窩動静脈断裂、右脛骨・総腓骨神経断裂
3 後遺障害の内容
右下肢の醜状(12級)、「右下肢の機能の点については、右膝関節が常に伸展したままの状態であること、右足関節の機能が全廃していることに加え、右膝下については右脛骨・総腓骨神経断裂によって感覚がない状態であること、難治性感染症の合併があり、排膿が持続して日々の処置が必要で、抗生物質の投与が不可欠であることを合わせ考慮すると、もはや機能を有する下肢とはいえないと解するべきであって、5級7号に相当する」
4 裁判所の判断
①逸失利益について
裁判所は、右下肢機能全廃についてのみ逸失利益を認め、1882万9997円の損害を認定しました。
「原告は主婦として稼働しており、労働可能年齢である67歳まで、少なくとも原告主張の年収241万4,400円の収入に相当する労働ができたと解すべきであって、原告の後遺障害は前記のとおり12級相当の右下肢醜状痕及び5級7号に相当する右下肢の用の全廃であるところ、原告は主婦であるから前者は労働能力に影響せず、結局、後者のみが労働能力を喪失させるものであって、前記認定の傷害の程度からすると、喪失率は79%と考えるのが相当である」
②後遺障害慰謝料について
後違障害慰謝料 1,500万円
「原告の前記の後遺障害の程度に難治性の感染症をかかえ、日々の処置が必要であって、症状固定後も前記のとおり入退院や手術を繰り返して処置を受けている事実、前記の将来の治療費・介護費、後記の装具類について損害を確定することができないこと並びに後記の本件事故の態様を合わせ考慮すると、原告を慰謝するには、1,500万円をもって相当と認める。」
5 コメント
本判決は、主婦は右下肢の醜状障害によっては、労働能力喪失がないと判示していますが、後遺障害慰謝料が通常よりも高額である点等でその部分を考慮しているとも考えられます(5級の後遺障害慰謝料は平成14年以降1400万円ですが、本判決時点ではもっと低額でした)