1 被害者

62歳・女子・兼業主婦

2 傷害の内容

右大腿骨頸部内側骨折

3 後遺障害の内容

右股関節人工骨頭置換術を施されたことにより股関節の用を廃したもの(8級)

4 裁判所の判断

① 逸失利益についての判断

逸失利益として 918万0155円を認定しました。

「原告は、骨折部が難治性の部位で骨癒合が期待できなかったことから右股関節人工骨

頭置換術を施され、これにより同股関節に改善の見通しが乏しい鈍痛や可動域の制限が残存したこと、人工骨頭置換術に関しては、近年、医療用材料等の進歩によって、約10ないし15年ほど以前に比べると安定してきており、術後緩みが発生したり再置換術の必要性が生じるなどの事態は減少してきており、原告の場合も、術後約3年を経過した時点で、緩み等の問題は発生していないこと、しかしながら、再脱臼をする危険性がつきまとうため、内股で膝をかがめるなど特定の姿勢・動作をとることが禁止されるほか、走る、飛び跳ねる、重い荷物を持つなどのほか、長時間の立ち仕事のような関節周囲の筋肉組織に過度の負担を掛ける行為が制限されること、したがって、日常生活における活動量が元々低下した75歳以上の高齢者に比べて、むしろ、60歳代の方が行動の制約が大きく、治療・回復に困難を伴うことの各事実が認められる。」

「股関節に人工骨頭置換術を施された場合、自賠責保険上の後遺障害等級は1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したものとして8級7号と評価されることになるところ、被告会社は、人工骨頭の改良等により、上記等級の労働能力喪失率(45%)をそのまま適用するのは実態に適合しないと主張し、これに沿った医師の意見書(乙6)を提出するが、上記のとおり認定した事実によれば、原告のように、立ち仕事に従事する60歳代の女性が股関節に人工骨頭置換術を施された場合、その労働能力が著しく制約されることは否定しがたいというべきであるから、稼働可能期間を通じて45%程度の労働能力を喪失したものと見ることが不相当であるとはいえない。」

「原告は、退院時62歳であったから、稼働可能期間は10年間(ライプニッツ係数

7.7217)程度と見るのが相当であり、かつ、この間の加齢による労働能力の低

下を考慮すれば、逸失利益算定の基礎収入としては、前記休業損害算定に用いた基礎

収入額の9割相当額264万1,950円程度と見るのが相当であるから、逸失利益

を算定すれば、下記のとおりとなる。」

 

なお、休業損害に用いたのは「平成12年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者60~64歳の平均年収293万5500円」

 

② 後遺障害慰謝料 800万円