1 被害者 30歳女子・兼業主婦
2 傷害の内容
頭部外傷、頸部捻挫、腰部捻挫、外傷性頸椎椎間板
ヘルニア
3 後遺障害の内容
頸部痛、左肩~前腕しびれについて、局部に神経症状を残すものとして、14級
被害者は、さらに、本件事故に関連するフラッシュバック、意欲減退、ストレスによる偏食、不眠等があるとしてPTSDに罹患している旨の主張をしたが、裁判所は認めなかった。
4 裁判所の判断
① 被害者はPTSDに罹患しているか
被害者「においてPTSDの重要な要件といえる自動車運転に関する回避行動が見られないこと、本件事故の態様及び反訴原告の本件受傷の内容・程度は通常のものと考えられること等に照らすと、反訴原告が本件事故によりPTSDに罹患したと認めることは困難である」として、否定しました。
② 逸失利益について
本判決は、後遺障害の逸失利益として205万8842円認めました。
基礎収入については、「症状固定日の平成13年賃金センサス、産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者全年齢平均年収である上記金額が相当である。」
労働能力喪失率は5%(14級の等級表とおり)
労働能力喪失期間は、18年間認めました。「当時反訴原告は32歳であり、上記第2、1(1)ないし(3)、第3、2(1)、(2)、3(3)アの事実及び本件に顕われた諸般の事情を総合すると、労働能力喪失期間を18年と認めるのが相当である。」
5 コメント
本件は、PTSDについては、否定しています。しかし、頸椎挫傷等による神経症状の14級の場合は、労働能力喪失期間を5年程度にすることが一般的であることからすると、18年という相当長期間にわたり、労働能力喪失期間を認めたと言うことは、実質的にPTSDの症状も踏まえた上で、その分の逸失利益を認めたのと同視することができます。