14歳の男子が後遺障害1級を負った事案で算定された逸失利益(仙台地裁H21年11年17日・出典自保ジャーナル第1823号)について紹介します。
1 被害者 14歳男子
2 傷害の内容
交通外傷(肺挫傷、右血気胸、出血性ショック、心肺停止、肝損傷、骨盤骨折)、蘇生後脳症(低酸素血症)及び脳挫傷(外傷性
くも膜下出血)と診断された。
入院505日 通院352日間(実治療日数54日)
3 後遺障害の内容
頭部外傷及び事故受傷後の低酸素脳症、外傷性くも膜下出血、低酸素脳症に伴うくも膜下出血、脳浮腫、脳室拡大・全脳萎縮による意思伝達不能、四肢・体幹の痙性麻痺による常時臥床等の障害につき第1級1号
右下肺葉の部分切除による胸腹部臓器の障害につき11級11号
4 裁判所の逸失利益算定額について
逸失利益算定の基礎となる収入について、平成17年の賃金センサス・男子全年齢平均賃金552万3000円とし、労働能力喪失率100%とし、期間49年間で算定し、逸失利益として9101万6830円を認定しました。
5 後遺障害慰謝料 3000万円
(なお、本件では父母にそれぞれ400万円ずつの慰謝料が認められています。これは、加害者が飲酒運転だったことも影響していると考えられます。)
6 介護費用
本判決は、介護費用について、自宅介護を前提に、被害者の母が67歳までは、
、被害者の母による介護もある程度可能であることを前提に日額1万5000円、母が67歳に達した後は、職業介護人の介護が全面的に必要として日額2万円の総額1億2441万
1255円を認めました。
なお、「現時点では法令による公的給付は相当程度に及ぶものの、将来においてもなおかかる給付が確定的に存続するか必ずしも明らかではないという事情を考慮に入れると、公
的給付の存在を過大に評価するのも相当ではない。」と判断しました。現実の公的給付を前提にした金額は、公的制度が将来的にどうなるかわからないので過大に評価しないと言うことです。
7 コメント
本判決は、将来の医療費について、加害者側が公的扶助があること、カルテ上は治療費が全額免除されていることを理由に医療費は損害に当たらない旨を主張しましたが、
「将来の公的給付の受給はあくまでも可能性にとどまり、将来にわたって確定的に受けられるか否かは明らかではない」ことを理由に月額5万7000円を平均余命まで認め、1301万5,699円の将来の医療費を認めました。
また、加害者は、「定期金払い」を主張しましたが、本判決は原告が「一時金払い」を主張している以上、定期金払いは認められないとして排斥しました。