平成11年11月に東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の交通部より三庁共同提言がなされました。
これは、それまでは、東京地裁方式や大阪地裁方式というように、交通事故の損害賠償算定において、各地域で取り扱いのルールが違っていたため、同じ症状の被害を受けた人が、たまたまどこに居住しているかで加害者に請求できる損害額が変わるのは不公平であるとの観点から、共通のルール作りをしたという風に考えてください。
具体的には、
①逸失利益算定の際の基礎収入をどのように考えるか、
②逸失利益算定の際の中間利息控除の計算式をどの方法を利用するか
の2点について、提言がなされています。現状では、基本的にこの提言にしたがった内容で判断がなされることとなります。
なお、逸失利益の算定における中間利息の控除とは難しい話のように聞こえますが、
簡単に説明しますと、年収500万円の人が、将来収入が50%減る可能性がある場合に、相手に250万円を毎年請求できることになります。
しかし、損害賠償請求の方法としては基本的には、一時払い、つまり、現時点で一括してまとめて全額請求するという方法が基本となります。
そうすると、来年もらえる250万円、再来年もらえる250万円・・・・・20年後にもらえる250万円
全てを「今」もらうのですから、そのままの金額を合計した額を「今」もらえるとすると、加害者側は、10年後や20年後に払えばいいお金を今全額払うという風に負担が大きい一方で、被害者があまりに得をしてしまいます。
公平な観点からすると、今まとめて本来は将来にしかもらえないお金をもらうのだから、そのお金で「資産運用」ができるはず。そうすると、将来的に資産運用して利息をもらえる被害者は、その利息分をすでに引いた額を加害者から受け取るのが公平だという考え方になります。
それが中間利息を控除すると言うことです。
そして、中間利息控除の計算方式として、ライプニッツ方式やホフマン方式がありますが、従来は東京地裁はライプニッツ、大阪地裁はホフマンというやり方があり、全国の裁判所でもバラバラだったりしたために、それを同じ計算方式に統一しましょう、というのが共同提言の中身です。
◎共同提言の骨子
A 交通事故による逸失利益の算定において、原則として、幼児、生徒、学生の場合、専業主婦の場合、及び、比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする。
B 交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情のない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する。 C 上記のA及びBによる運用は、特段の事情のない限り、交通事故の発生時点や提訴時点の前後を問わず、平成12年1月1日以降に口頭弁論を終結した事件ついて、同日から実施する。