神戸地裁平成3年6月26日判決は顔面醜状障害の逸失利益を認めましたが、概要は次のとおりです。

 

1 被害者  4歳の女子(症状固定時6歳)

2 傷害の内容は、顔面裂創、全身打撲により入院36日間、通院49日間という事案です。

3 後遺傷害の内容としては、額前部に長さ3センチ、幅3センチの瘢痕。

右眼瞼から右眼下にかけて長さ5センチ、幅3. 2センチの瘢痕。

自賠責事務所により後遺障害等級7級と認定されました。

4 裁判所の逸失利益に関する判断は、「原告の、右認定にかかる本件顔面醜状痕は、それ自体が同人の身体的機能の障害をもたらすものでないとしても、現在の社会情勢から見て、女子である同人が将来就職する際、右顔面醜状痕の存在がマイナス要因として作用し、同人の選択し得る職業の制限、あるいは就職の機会の困難さを招来する高度の蓋然性が、客観性をもって推認される。しかして、右蓋然性が肯認される以上、原告につき、右顔面醜状痕による労働能力の一部喪失が認められ、かつ、同人の将来の収入も、それに応じて減少すると予測するのが相当である。右見地に立脚する限り、原告の本件後遺障害による逸失利益も、通常の後遺障害(身体的障害)による逸失利益の場合と同じく、これを肯認するのが相当である。」と判示しました。

5 具体的には、昭和62年女子高卒労働者の賃金センサスの平均給与額246万7000円を基礎に、労働能力喪失率25%、労働能力喪失期間を49年間(18歳から67歳まで)とし、1134万0182円を認めました。