3歳女子・14級について、逸失利益を否定し慰謝料算定の中で斟酌した東京地裁平成6年9月20日判決を紹介します。

1 被害者は、3歳の女子。

2 傷害の内容は、左足関節部内側の創傷を負い、合計30日間の治療を受けました。

3 後遺傷害の内容は、下肢の露出面にてのひら大の醜い後を残すものとして14級5号が認定されました。

4 逸失利益に関する裁判所の判断は次のとおりです。
 「左足首の瘢痕、拘縮性の肥厚、知覚・感覚過敏については、その部位や程度等から考えて、また、原告が現に元気に通学していることも参酌すると、これらによって将来の労働能力に影響を与えるものであると認めるのは困難である。なお、肥厚部分の存在が原因で原告の成長につれて何らかの運動機能障害が生じるおそれがあるとしても、運動機能障害の内容、これが生ずる蓋然性ともに不明であって、右をそれを理由に労働能力が喪失したと認めることもできない。右後遺障害の存在及び影響についても、後記慰謝料の算定に当たって斟酌すべき事由とするのが相当であって、独立に逸失利益を認めることはできない。」と判示しました。

5 コメント

独立して逸失利益を算定することは、否定しましたが、この判決は後遺障害慰謝料として350万円認定しています。

14級の労働能力喪失率が通常5%とであること、平成24年時点においても14級の後遺障害慰謝料は110万円程度であることからすると(判決時点ではもっと一般的に後遺障害慰謝料の金額が低かった可能性があります)、実質的には逸失利益を一定程度認めたのと同様の結論となっています。