9歳女子・顔面醜状痕・12級14号の事案で、逸失利益を認めた大阪地裁平成21年1月30日判決を紹介します。

1 被害者は、9歳女子。

2 傷害の内容は、左眼瞼裂傷、左網膜震盪で、95日の入院と49日の通院をしました。

3 後遺障害は、顔面に瘢痕が3つ。①長さ2センチ、幅3.5センチの瘢痕、②長さ8ミリ、幅3.2センチの瘢痕、③長さ1センチ、幅2センチの瘢痕。さらに線状痕が2つ。①長さ2センチ、幅2ミリ、②長さ8ミリ、幅3ミリ。

自賠責事務所は12級14号と認定をしました。

4 裁判所は、逸失利益について、「醜状痕の部位、個数、程度等及び原告がまだ未就業の女性であることにかんがみると、対人接客等の見地において原告の就業機会が一定限度制約されることは否定できないと考えられるし、また、自ら醜状を意識することによる労働効率の低下も考えられるところである。そうすると、本件においては、逸失利益が生じるものと考えることが相当であり、その程度も、前記認定のような醜状痕の個数、程度にもかんがみると、後遺障害等級12級相当で14%は生じているとみることが相当である。形成外科に関する医療の進歩があるとしても、現時点でこの醜状を治癒させるに足りる技術が確立しているものとは認められず、この認定を左右するものではない。」と判示しました。

5 具体的に認められた逸失利益としては、平成16年賃金センサス女性労働者の全年齢平均賃金である350万2200円を基礎に、労働能力喪失率14%とし、期間を49年間(18歳から67歳まで)としました。

認定された逸失利益の金額は、574万2340円でした。

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判決においては、機能障害の面ではなく、あくまで対人接客の見地と「自ら醜状を意識することによる労働効率の低下」という理由付けで逸失利益を認めました。

また、後遺障害慰謝料について、7級になれば1030万円、12級だと280万円ということは、差が極端であるとして、12級の280万円を2倍にし、さらに加害者の過失の重大性、悪質性からすると4割り増しにすべきとして、784万円を認めました。