◎ 共同提言の骨子についての補足説明

○基礎収入について

(一) 交通事故による逸失利益の算定において、(1) 原則として、(ア)幼児、生徒、学生の場合、(イ)専業主婦の場合、及び、(ウ)比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴別・男子又は女子の労働者の全年齢平均賃金)によることとし、(2) それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする。
(二) 上記の(1)(ウ)の場合において全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を採用する際には、その判断要素として、以下の諸点を考慮する。

(1) 事故前の実収入額が全年齢平均賃金よりも低額であること。

(2) 比較的若年であることを原則とし、おおむね30歳未満であること。

(3) 現在の職業、事故前の職歴と稼動状況、実収入額と年齢別平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・男子又は女子の労働者の年齢別平均賃金)又は学歴別かつ年齢別平均賃金との乖離の程度及びその乖離の原因などを総合的に考慮して、将来的に生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められること。
(三) なお、全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を採用するについては、原則として、死亡の場合には死亡した年の全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を採用し、後遺障害の場合には症状が固定した年の全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を採用する。
(四) 以下の具体的な場合において、採用すべき基礎収入につき検討する。

(1) 有職者   (ア)給与所得者の場合・・・原則として事故前の実収入額による(後記の適用例参照)。ただし、就業期間が比較的短期であり、かつ、事故前の実収入額が年齢別平均賃金より相当に低額であっても、おおむね30歳未満の者については、前記(二)の判断要素を総合的に考慮して、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には、全年齢平均賃金による。なお、実収入額と年齢別平均賃金との乖離の程度が大きく、生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められないような場合には、年齢別平均賃金又は学歴別平均賃金の採用等も考慮する。
(イ)事業所得者の場合・・・原則として申告所得額による。ただし、事故前の申告所得額が年齢別平均賃金よりも相当に低額であっても、おおむね30歳未満の者については。前記(二)の判断要素を総合的に考慮して、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には、全年齢平均賃金による(後記の適用例⑦参照)。なお、適用例⑧ないし⑪も参照)。なお、実収入額と年齢別平均賃金との乖離の程度が大きく、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められないような場合には、年齢別平均賃金又は学歴別平均賃金の採用等も考慮する。
(2) 家事従事者

(ア)専業主婦の場合・・・原則として全年齢平均賃金による(後記の適用例⑫参照)。ただし、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働の内容などに照らし、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額する。
(イ)有職の主婦の場合・・・実収入額が全年齢平均を上回っているときは実収入額によるが、下回っているときは上記(ア)に従って処理する。
(3) 無職者

(ア)幼児、生徒、学生の場合・・・原則として全年齢平均賃金による。ただし、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金又は学歴別平均賃金の採用等も考慮する。また、大学生及びこれに準ずるような場合には、学暦別平均賃金の採用も考慮する。
(イ)その他の者の場合・・・就労の蓋然性があれば、原則として、年齢別平均賃金による。
(4)失業者   再就職の蓋然性のある場合に逸失利益の算定が可能となり、基礎収入は、再就職によって得ることができると認められる収入額による。その認定に当たっては、以下の諸点に留意し、失業前の実収入額や全年齢平均賃金又は被害者の年齢に対応する年齢別平均賃金などを参考とする。すなわち、おおむね30歳未満の者の場合については、再就職によって得られる予定の収入額又は失業前の実収入額が、年齢別平均賃金より相当に低額であっても、前記(二)の判断要素を総合的に考慮して、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には、全年齢平均賃金による。ただし、上記の予定収入額又は実収入額と年齢別平均賃金との乖離の程度が大きく、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められないような場合には、年齢別平均賃金又は学歴別平均賃金の採用等も考慮する。