1 被害者 28歳(症状固定時)・男子
2 傷害の内容
右足関節開放性脱臼骨折
3 右足関節の機能障害 10級
4 裁判所の判断
①逸失利益について
「原告の右足関節の機能障害の後遺障害については、損保料率機構自賠責損害調査事務所において、「その可動域が健側(左足関節)の可動域角度の2分の1以下に制限されていることから、『1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの』として後遺障害等級10級11号に該当する」と判断されている。ただし、労働能力の低下の程度(労働能力喪失率)は、労働省労働基準局長通達(昭和32年7月2日基発第551号)別表労働能力喪失率表を参考としつつ、原告の職業、年齢、後遺症の部位・程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して評価することになる。
これを本件においてみるに、原告が総合職として入社したB会社は、ジョブローテーション制をとっており、総合職については様々な部署を経験させ、育成し、昇進・昇格していくことにしているところ、原告は足に後遺障害を残しているために営業職や生産現場等の一定の部署を経験し難いことが予想され、それ故に将来の昇進・昇格について同僚と比べて相対的に不利益な取扱いを受けるおそれがないではないから、原告には後遺障害に起因する労働能力低下による財産上の損害があると言うべきであ
る。ただし、その不利益の程度は明確に把握し難い上、原告の勤務先が上場企業であることから転職の可能性も低いと予想されること等の諸事情も考慮すると、原告の後遺障害による逸失利益算定については、症状固定時において労働能力の10%を喪失したものと認めるのが相当である。」
「労働能力喪失期間については、原告の後遺障害が関節変形という器質的障害に由来しているため、今後、軽快していく可能性は低いと判断されることも考慮して、症状固定日(平成17年4月28日)から就労可能年齢67歳までの39年間(対応
するライプニッツ係数は17.0170)と認めるのが相当である。」
「 逸失利益額算定上の基礎収入額については、原告の勤務先会社(B会社)がいわゆる上場企業であり、原告自身が転職する可能性は低いと予想できるけれども、同社のモデル年収一覧表記載のとおりに昇格していくのか不確実であることは否定で
きないから、同社の大卒社員の平均賃金額を採用するのは相当でない。そして、原告の勤務先会社(B会社)が労働者数1,000人以上の企業であるから、原告の症状が固定した平成17年の賃金センサス第1表、男子労働者、企業規模1,000人以上、大学・大学院卒の平均賃金額(年額775万0,800円)を基礎収入額とするのが相当である。」
として、逸失利益を1318万9536円認めました。
②後遺障害慰謝料について
600万円
5 コメント
等級表によれば、10級の労働能力喪失率は27%ですが、本判決は喪失率を10%と認定しました。
なお、後遺障害慰謝料は10級の場合、550万円が基本となりますが、600万円と認定しました。