人身傷害保険とは、被害者が加入している自動車保険についている特約です。

この保険が登場する前は、被害者は加害者に損害賠償請求はできますが、自分の過失部分は自分で負担する、つまり、過失分は加害者に請求することができませんでした。

たとえば、自分の損害が5000万円あったとした場合、自分の過失が30%あれば、加害者に請求できるのは3500万円のみでした。

しかし、自分の保険に人身傷害補償保険がついていれば、自分の過失分の1500万円はその保険が負担してくれるという解釈が定着しています。

ただし、話はそう簡単なことではありません。

まず、①第一に交通事故の損害賠償の基準は自賠責基準、保険会社の基準、裁判の基準と3段階あります。損害の全額をもらうには裁判を起こす必要があります。

②そして、自分の保険の人身傷害保険と加害者に対する請求の順序としては、人身傷害保険を先に取得した上で、後に加害者に対する裁判を起こさなければなりません。

これが原則です。

大阪高等裁判所平成24年6月7日判決は、人身傷害補償保険の賠償先行払いについては訴訟基準差額説を採用しないという判決を出しました。

これは、簡単に言うと、先に加害者に裁判を起こして、その後、自分の過失分を人身傷害保険に請求しても、加害者に対する裁判で決まった損害額の自分の過失分をもらうことはできないということです。

つまり、計算方法が変わるということです。金額が低くなることが通常です。

ただし、人身傷害保険は、約款がめまぐるしく変わっていますので、現在は、保険会社によっては、人身傷害保険を先に請求するか、後に請求するかで結論が変わらない場合もあります。

請求する順序は重要ですので、請求する前に専門家に相談してください。