1 被害者
45歳・男子・会社役員
2 傷害の内容
頚部・背部挫傷、第7胸椎圧迫骨折の傷害
3 後遺障害の内容
第7胸椎の圧潰による変形が残存し、自賠責保険の事前認定手続において、脊柱に変形を残すもの」として11級7号に認定された。
後遺障害によって、原告松男には、背部の疼痛が残り、頚部、腰部の疼痛、左上肢のしびれが出ることがあり、長時間、上を見る姿勢を取ることや、脚立やはしごの上り下りや、前かがみの姿勢でハンマーを使う作業を長時間おこなうことなどが困難となっている
4 裁判所の判断
①逸失利益について
裁判所は逸失利益として2369万3400円認めました。
・算定の基礎収入
「遺障害逸失利益の算定上の基礎収入としては、上記の原告松男の役員報酬等の推
移に照らし、本件事故前年の収入である900万円とするのが相当である。」
・労働能力喪失率
「 後遺障害逸失利益の算定上の労働能力喪失率としては、上記の後遺障害の内容に照らし、20%とするのが相当であり、また、労働能力喪失期間としては、原告松男は
症状固定時に45歳であったことから、67歳までの22年間とするのが相当である。」
② 後遺障害慰謝料 420万円
5 コメント
脊柱変形で11級の場合は保険会社は労働能力の喪失がないとの主張をすることがよくあります。しかし、本判決は、被害者の症状を細かく認定し、11級の自賠責の等級表通りの20%を認定しました。また、会社役員であるにもかかわらず、労働の対価部分と利益配当部分をわけることなく、逸失利益算定の基礎収入を事故前年度の収入900万円としていますが、本件の場合は、事故前後数年で多いときでは1500万円の収入があったことも900万円を基礎としたことの一因と考えられます。