1 被害者
66歳(症状固定時)・男子・会社役員
2 傷害の内容
左下腿部及び左足関節部開放性骨折等
3 後遺障害の内容
右足が左足より約2センチ短縮、左膝の靱帯が伸びたことによる関節痛(13級9号)
4 裁判所の判断
① 逸失利益について
「原告豊島は、本件事故当時原告会社の専務取締役として勤務して、その年間給与所得として金726万円の支給を受けていたこと、そして、原告会社においては役員として管理職の仕事をしており、その給与のなかにはいわゆる役員報酬の部分と給与及び賞与の部分とが含まれているものと解されること、本件後遺障害は原告豊島の労働能力や通常の生活に直ちに大きな影響を及ぼすものではないことの各事実が認められる。」
「以上の各事実、前掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合して判断すると、原告豊島の本件後遺障害による逸失利益の対象となる収入は、1か月当たり金50万円と認めるのが相当であり、原告豊島の本件後遺障害は、平成8年4月8日にその症状が固定し、原告豊島は、右の症状固定当時66歳であったから、本件後遺障害により、その後8年間にわたり、その労働能力の100分の9相当を喪失したものと認められるから、その間に原告豊島が得ることができたものと推認しうる年収額は、金600万円であるというべきであり、年5分の割合による中間利息の控除は新ホフマン係数(6・589)によるのが相当である。」
② 後遺障害慰謝料 170万円
5 コメント
本件の被害者は会社役員です。会社役員の逸失利益を算定するに当たっては、その基礎となる収入額について、役員報酬が必ずしも全額基礎収入としてさんていされるわけではなく、その報酬のうち、労働の対価部分と配当部分にわけて、労働対価部分のみが基礎収入とされます。つまり、配当部分というのは仕事をするかどうかに関係なくもらうことができるはずだ、だから、後遺障害による労働能力喪失とは関係がない、という考え方です。本判決は、被害者の役員報酬726万円の内、600万円を労働対価部分と認め、逸失利益を算定しました。