10歳男子である被害者が複数の後遺障害により併合10級と認定された場合の後遺障害に関する裁判例について紹介します。

1 被害者は10歳の男子でした。

2 傷害の内容は、前胸部、腹部、左大腿部、鼠径部挫減創で、入院83日を含む治療期間は100日間でした。

3 後遺障害は、左股関節機能障害(12級7号)、左膝関節機能障害(12級7号)、左下肢神経症状(12級12号)、腹部等の醜状・疲痕(12級相当)、右皐丸欠損(11級11号)と複数あり、併合10級と認定されました。

4 逸失利益について、裁判所は「前認定の後遺障害の内容、程度、特に原告の左下肢については、三大関節中の二関節の機能に著しい障害がある上、頑固な神経症状もあること、労働省労働基準局長通達「障害等級認定基準」第2 の10(3)ロでは、「C同一下肢の三大関節に機能障害が存する場合例1一下肢の足関節に単なる機能障害が存し、同下肢のひざ関節に著しい機能障害が存している場合は、第9級とする。・・・なお、一下肢の三大関節のすべての機能に著しい障害を残すものは8級に、また一下肢の三大関節のすべての関節の機能に障害を残すものは第10級に準ずる障害として取り扱うこと。」とされていること、原告の左下肢の機能障害あるいは神経症状が将来改善する可能性は少ないこと、しかしながら、他方、原告のような児童の場合、これに適応する教育、訓練をある程度行うことができ、また、職業選択の可能性も比較的大きいと認められること等を総合考慮すると、原告は、前記後遺障害により、満18歳から満67歳まで40パーセントの割合で労働能力を喪失したものと認めるのが相当である。そこで、原告は、右就労可能期間、昭和62年賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、男子労働者学歴計18~19歳の平均月間給与額14万9,200円、年間賞与その他特別支給額13万8,100円の収入を得ることができたものと推認されるから、右金額を基礎に右労働能力喪失割合を乗じ、新ホフマン式計算法により原告の逸失利益の現価を求めると、次のとおり1,543万3,091円(1円未満切捨て)となる。」

5 コメント

通常、10級の労働能力喪失率は27%ですが、裁判所は複数ある後遺障害について考慮し、具体的な症状等から40%の労働能力喪失率を認定しました。

また、本判決では、中間利息控除の計算式として新ホフマン方式を採用しています。

(現在では、ほとんどライプニッツ方式が採用されています。)