幼児・児童・生徒・学生が事故の被害者になった場合に親が知っておくべき6つのこと
1 症状がひどくなることはないの?今後ひどくなったらどうするの?
(1) 自分の家族やお子さんが事故の被害者にあわれた場合に、一番気になることは、医師から症状固定と診断されて、治療は終了になったけど、今後、今よりも症状がひどくなって、認定された後遺障害よりも重い後遺障害になったら、どうしようという不安がおありになると思います。
特に、物理的な骨折などではなく、脳に高次脳機能障害があらわれているようなケースでは、そのようなご心配があることと思います。
一般に、高次脳機能障害は回復することはあっても悪化することはないと言われています。しかし、個別の事情もありますし、すべてがそう言い切れるものなのかは未知の部分もあるかもしれません。
(2) 症状固定は、状況が一進一退を示す状況で、これ以上劇的には良くも悪くもならないという状態をいいます。
そして、後遺障害は、症状固定時の状況を前提に、診断がされます。
万が一、症状固定時よりも、将来的に症状が悪化した場合は、その時点において、過去にさかのぼって損害賠償請求することは全く不可能というわけではありません。
症状固定時に現れていなかった症状は、示談や裁判での解決には含まれていないと考えることになります。
ですので、万が一将来悪化したというような場合は、別途その状況に基づいて、賠償請求が可能かどうか検討する事となります。
(3) ただし、別の問題があります。それは、因果関係の問題です。
万が一、症状が悪化したという場合、それが事故が原因で悪化したといえるかどうかが因果関係の問題です。おそらく、後になって、悪化した症状は症状固定時には存在しなかったということが証明できても、「それが事故が原因だ」と証明することは難しい場合があると考えられます。
医学的な資料は、保存期間が限られているため、症状固定時の時点で取得した上で、ご自身で保管されるのがよいでしょう(デジタルデータにしておけば尚良いと思います。)。
2 学校を留年することになったら
お子さん(幼児・児童・生徒・学生)が、交通事故の被害にあい、特に重い傷害を負った場合、入院が長引いて、進級できなかった、留年した、就職が遅れた、などの状況が発生する場合があります。
この場合に遅れた時間そのものを取り戻すことはできないとしても、留年や就職が遅れればその分、学費など特別な費用がかかります。
これらの費用について、加害者側に負担してもらえるかと言う問題ですが、被害者の被害の内容、程度、進級できなかったり、留年した理由等を考慮して、認められるケースがあります。
学校を休学したために他の人について行けなくなった。したがって、学習塾や家庭教師をつける費用が認められたり、事故が原因で留年することになった場合に、授業料やアパートの家賃を認めた裁判例等があります。
また、事故が原因で就職が遅れた場合には、まだ働いていなくても、就職した前提で症状固定時までの休業損害を認めている裁判例もあります。
3 入院や通院に付き添った損害は
(1) 入院の付き添い費用について
現在は、完全看護の病院が多いこともあり、基本的には、単に、家族の誰かが入院中付き添ったというだけでは、その家族に発生した損害(入院付き添い費用)を請求することは難しいと言えます。
しかし、医師の指示があるときはもちろん、症状の重さ、被害者の年齢等により、入院付き添い費が認められることもあります。幼児や児童の場合は認められやすいと言えるでしょう。
(2) 通院付き添い費用について
通院の際も家族が付き添うことは、入院の場合以上によくあることです。
しかし、通院の場合は、単に送迎をしたと言う程度では付き添い費用として、損害は認められません。年齢が小さい場合や被害者の症状が重い場合等には、認められ安いと言えます。幼児や児童の場合は認められやすいと言えるでしょう。
4 逸失利益について
逸失利益とは、いわば将来の休業損害をいいます。将来、事故による後遺障害がなければ稼ぐことができた収入が減少する可能性があるため、損害として認められるものです。
休業損害は、働いていない人には認められませんので、幼児や児童は基本的に認められません。学校を休んだというのは休業損害は発生しません。
ただし、生徒もアルバイトをしていたり、働きながら勉強している場合は休業損害も発生することもあります。
問題は、逸失利益ですが、今はまだ働いていなくても、将来は誰もが働く可能性があります。ですので、将来の収入が減少する可能性に基づいて発生する逸失利益についても、幼児・児童・生徒・学生も請求することができます。
現実に今の収入はないため、賃金センサス相当の収入があると見なして計算をします。賃金センサスといっても、男女合わせたものや、男性だけのもの、また、学歴別に定められているものなど様々なものがありますが、どの賃金センサスを使うかは、事情やどのように賠償請求をしていくかに関連しますので、専門家にご相談されることをおすすめいたします。
5 過失相殺について
「本件交通事故発生の責任の2割は1歳の子どもにある」という結論がもしあったとしたら、誰もが首をかしげますよね。1歳の子どもに責任ていわれても・・・と思うはずです。
未成年者の過失を問う場合は、何歳でもよいというわけではなくて、事理弁識能力が備わる小学校入学の前後あたりから、と言われています。この時期になれば、交通ルールも簡単なものは理解できるであろうという前提です。
ですから、小学校入学した後のお子さんが急な飛び出しをしたような場合は、本人の過失として考慮されます。
では、5歳の子どもならどうかといいますと、「被害者側の過失」といって、例えば子どもの親や監督をする人に過失がなかったかが問題になります。
6 過失割合について
交通事故の過失割合は、事故の態様という客観的な事情により決められます。
そして、被害者の年齢は、通常は重視されませんが、一定程度は考慮されています。
多くの事案において、幼児は10%程度、低い過失になります。また、児童は5%程度低い過失になります。同様に身体障害者は10%程度低い過失に、高齢者は5%程度低い過失となります。
交通事故においては、車やバイク等は、一歩間違えば凶器になり得るので、社会的に弱い立場に人は強く保護されているものと言えるでしょう。
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