遷延性意識障害の被害にあった家族の方が知っておくべき3つの知識
1 遷延性意識障害とは何か?
遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)とは,いわゆる「植物状態 vegetative state 」のことをいいます。「遷延」とは,ながびくことをいいます。
つまり、交通事故による脳の損傷によって、意識障害が生じている状態、昏睡状態がいつまでも続いている状態をいいます。遷延性意識障害の定義については,日本脳神経外科科学会による定義(1976年)を用いるのが一般的です。正確には、植物状態の定義です。
通常の生活を送っていた人が脳損傷を受けた後で以下に述べる6項目を満たすような状態に陥り、ほとんど改善がみられないまま満三ヶ月以上経過したものをいいます。
① 自力移動不可能。
② 自力摂食不可能。
③ し尿失禁状態にある。
④ たとえ声を出しても意味のある発語は不可能。
⑤ 「目を開け」、「手を握れ」等の簡単な命令にはかろうじて応じることも出来るが、
それ以上の意思疎通は不可能。
⑥ 眼球はかろうじて物を追っても認識はできない。
遷延性意識障害になると,自分で体を動かすことができないので,身の回りのことはすべて介助が必要です。話すことも聞いて理解することも出来ず,自分で食事を採ることも移動することも出来ません。
ただし、脳死とは異なります。脳の機能が完全になくなっているわけではありませんので,昏睡や覚醒のリズムはありますし,排尿や排便も可能です。栄養状態を良好に保ち,褥瘡(床ずれ)や肺炎などの予防に配慮した医療を施すことで,長期に生存することも可能です。
遷延性意識障害の患者の方は,いくつかの医療機関を転々として,在宅介護に落ち着くケースが多いようです。病院は、保険点数との関係から、3ヶ月を目処に退院や転院を促すこともよくあるようです。
2 遷延性意識障害と回復可能性
遷延性意識障害の方のご家族が一番気になるところが、回復可能性があるかどうかと言う点だと思います。
これについては、様々な考え方があるようです。まずは、そもそも「認知機能がないことを確実に知るということはむずかしい」そうです。ですから、植物状態、遷延性意識障害と診断されても、そもそもその診断が誤りであるケースも見られるそうです。
また、外傷により遷延性意識障害と診断された場合では、その診断が正確になされた場合でも、1年程度の期間は、意識や認知機能が戻る可能性があるということです。
時間が経過した後も、声をかけるとにっこりほほえむようになった、はい・いいえで回答出来るような質問には、指の合図で答えるようになった、などの回復が見られる場合もあるそうです。
3 遷延性意識障害とリハビリ
現時点では,遷延性意識障害に対して一律のリハビリ方法が決まっているわけではありません。それは,遷延性意識障害の患者様ごとで状態や状況が様々であり,リハビリをする環境も異なるためです。まだ、生命の危機にあり症状が安定していない状態の場合はいうまでもなく、大きな音や強い刺激は避けた方が良いと思われます。医師や病院のスタッフの方ともご相談の上、回復の希望を捨てずに続けることが大切と考えられます。
(1) ご家族による呼びかけ
呼びかけは,遷延性意識障害のリハビリの基本とされています。本人の反応を誘発するために行います。意識障害になっても,聴覚は最後まで残るといわれており,反応はなくても聞こえているそうです。
またこの呼びかける文句として,単に名前を呼びかけるだけよりも,具体的な呼びかけ(例:私が誰だかわかる?など)の方が,効果がみられるそうです。
さらに,患者様の方が「はい・いいえ」で答えられる質問をすると反応が見られることが多いようです。声を出すことができなくても、指の会津などで返事ができるかもしれません。笑顔が見られることもあるようです。なるべく大きな声でゆっくりと話しかけてあげてください。
(2) 五感への刺激
視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚から刺激を与えられるというものです。視覚刺激にはライトなどの明るい色のものを見せる等の方法があります。聴覚刺激では音楽を聞かせます。本人がもともと好きだった音楽や効果音のようなものが適しているようです。
また,音楽も,再生したり,停止したりとメリハリをつけると,より刺激があたえられます。触覚刺激は,肩をたたいたり,手を握ったり,マッサージなどで積極的に体に触れます。音楽をかけたり話しかけながら,聴覚と同時に刺激すると,より効果的のようです。
他にも,アロマや食事の香り等,様々な刺激を与えます。まばたきや表情の変化など,反応が見られることもあります。
(3) 体を起こす
健常者は眠るとき以外の多くの時間は頭側から足側へ重力を受けていますが,患者様は仰向けの場合,腹側から背側へ重力をうけることになります。そこで,他者の介助や機器を利用して,横にならない時間を作ります。
例えば,車いすに座ったり,ベッドから足を下して腰掛けたり,あるいは介助を受けて起立したりします。一定時間だけでも重力を正常な向きに受けることで本人を刺激します。
(4) 食事の訓練
意識障害であっても,下の奥を刺激すると嚥下反応が起きて水などを飲みこむことができます。頸部,顔面のマッサージ,舌・口唇の筋肉の刺激,下顎の開閉運動などを実施します。遷延性意識障害の方は,通常,胃ろうによる食事になることが多いのですが,嚥下訓練によって,ペースト状の食品の嚥下ができるようになるケースもあるそうです。
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