後遺障害と慰謝料・逸失利益

後遺障害と慰謝料・逸失利益

後遺障害の等級認定がなされた場合には、その等級に応じて、慰謝料や逸失利益が認められます。
ですから、後遺障害の等級認定は非常に大きな意味を持ちます。

医師に書いてもらった後遺障害診断書の内容が、等級認定においては、非常に重要なものとなるため、保険会社に提出する前に、弁護士に内容を確認してもらうことをお勧めします。

 

後遺障害の等級認定

後遺障害の等級認定は、医師が作成する後遺障害診断書に基づいて、 一定の基準に該当するかどうかと言う観点から、自賠責の調査事務所が判断します(損害保険料率算出機構)

この場合に忘れてはならないことは、自賠責の調査事務所は、 やっていない検査はそのような検査をする必要がなかったからしなかった、 提出していない資料は存在しないものとして扱う ことになりますので、医師に後遺障害診断書を作成してもらう時点で、必要な検査は全て受ける必要があります。 具体的な認定の基準と自賠責に請求できる保険料額はこちら 「自賠責保険 後遺障害別等級表」 をご覧下さい。

後遺障害の慰謝料

裁判上の基準による後遺障害慰謝料は、次のとおりです。
()内は、自賠責保険から出る後遺障害の逸失利益・慰謝料を合わせた限度額です。
* 級の隣の数字は、「慰謝料」だけの数字です。ここに逸失利益が加算されますので、自賠責から出る金額と比較すると、相当高額な数字になります。
* 任意保険会社が示談で提示する金額は、合計しても、自賠責の金額に若干プラスしたものとなることが多いです。 また、保険会社が提示する金額は「逸失利益と後遺障害慰謝料の内訳を出さずに合わせて後遺障害の損害」などと記載されることもあります。

裁判基準           自賠責基準

第1級 慰謝料だけで 2800万円 
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 3000万円から4000万円)

第2級 慰謝料だけで 2370万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 2590万円)

第3級 慰謝料だけで 1990万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 2219万円)

第4級 慰謝料だけで 1670万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 1889万円)

第5級 慰謝料だけで 1400万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 1574万円)

第6級 慰謝料だけで 1180万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 1296万円)

第7級 慰謝料だけで 1000万円    
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 1051万円)

第8級 慰謝料だけで 830万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 819万円)

第9級 慰謝料だけで 690万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 616万円)

第10級 慰謝料だけで 550万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 461万円)

第11級 慰謝料だけで 420万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 331万円)

第12級 慰謝料だけで 290万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 224万円)

第13級 慰謝料だけで 180万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 139万円)

第14級 慰謝料だけで 110万円     
(自賠責、慰謝料と逸失利益で 75万円)

裁判上の基準で、慰謝料と逸失利益を計算する場合と、自賠責基準に少し上乗せしただけの任意保険基準は、等級が上になればなるほど、開きが出てきます。任意保険会社が提示した金額の2倍以上の請求が認められることもよくあります。 相談をされるだけでしたら、無料ですので、一度ご相談をされてから、示談するかどうかを考えても良いかと思います。

後遺障害の逸失利益   

後遺障害の逸失利益とは、「もし、その交通事故がなくて、障害を負うこともなかったならば、これだけの収入は得られたはずだ!」 という場合の、①交通事故により負傷した→②後遺障害を負ったので、今までと同じようには働けなくなった→③本来は、働いて収入を得ることができた金額と減少した金額の差額のことを言います。

ただし、現実には、「後遺障害を負ったことによって現実に減った収入」を請求するというのは容易ではありません。

例えば、高校生が後遺障害を負ったという場合、現実にはまだ働いていないでしょうし(アルバイトは別ですが)、働いている人でも将来の収入が今の収入と同じとは限りません。 ですから、逸失利益というのは、ある程度フィクションの要素が含まれています。 つまり、この等級の障害を負った人は、労働能力がこのくらい減少するはずだ、という数値が客観的に定められています。

逸失利益の算定方法は、基本的には次のように行います。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

①基礎収入は、働いている人は事故時の収入になるのが原則です。 ただし、
・ 30歳未満の者について、将来はより高額な収入が得られる可能性があるときは、賃金センサスにより計算します。
・ 無職の人については、働く意欲と就労可能性があるときは、従前の収入を参考に計算します。
・ 年少者(幼児、児童、生徒、学生)等については、賃金センサスにより算定します。
・ 主婦などの家事従事者の場合は、賃金センサスにより算定します(主婦は収入がないから収入の減少がないという考え方はしません)。

② 労働能力喪失率は、後遺障害の等級によって、5%から100%まで決められています。 ただし、その人の年齢、職業、症状固定時の症状等によって、調整されることがあります。 変形障害や顔面の醜状傷害の場合は、一般的に等級表の喪失率がそのまま認められることは少なく、やや少ない喪失率となることが多いです。 (これもその人の症状との兼ね合いですので、ケースバイケースの判断となります。)

後遺障害等級と労働能力喪失率の関係は次のとおりです。

第1級  労働能力喪失率 100%
第2級  労働能力喪失率 100%
第3級  労働能力喪失率 100%
第4級  労働能力喪失率 92%
第5級  労働能力喪失率 79%
第6級  労働能力喪失率 67%
第7級  労働能力喪失率 56%
第8級  労働能力喪失率 45%
第9級  労働能力喪失率 35%
第10級  労働能力喪失率 27%
第11級  労働能力喪失率 20%
第12級  労働能力喪失率 14%
第13級  労働能力喪失率 9%
第14級  労働能力喪失率 5%

③ 労働能力喪失の期間も、ある程度決まっていますが、年齢、後遺障害等級、症状等に応じて、期間が変わります。

・基本的には67歳までの期間が労働能力喪失期間となります。
・年長者の場合は、67歳までの期間と平均余命の2分の1の期間と比較して長い方が労働能力喪失期間となります。

例1) 症状固定時62歳の男性の場合、67歳までの期間は5年です。 
他方、62歳男性の平均余命は平成22年のデータでは21.22年ですので その2分の1である10年の方が、67歳までの5年よりも長いので、10年が労働能力喪失期間となります。

例2) 70歳で死亡した女性の場合は、すでに67歳はすぎているので、平均余命の2分の1の期間で労働能力喪失期間を計算します。
70歳女性の平均余命は平成22年のデータでは、19.53年ですので2分の1である9年が労働能力喪失期間となります。

・ いわゆるむち打ちの事案においては、14級の場合は労働能力喪失期間5年、12級の場合は10年とされるのが一般的です。
・ その他の事案も症状によっては、期間が短縮されることもあります。

④ ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための計算式の一つの方法を言います。他に有名な中間利息控除式としてはホフマン方式がありますが、 現在は、裁判所による算定は一般的にライプニッツ方式によります。 中間利息が引かれる理由は次のとおりです。

逸失利益は、将来にわたって、例えば30年の期間にわたり毎年損害が発生するものです。
そうすると、理論的には毎年毎年1年分を請求するのが筋のように思えます。

しかし、現在の損害賠償実務においては、このような考え方は基本的にはとっておらず、紛争を「一挙に解決」するために、一括して請求することになります。 本来30年後にもらえる逸失利益分も、現時点において一括して請求するため、今後は先取りした分の逸失利益からは財産を運用した利益が出せるだろうというのが基本的な考え方です。 したがって、純粋に基礎となる収入額に年数をかけて逸失利益を算定するのではなく、利息分は引いた前提での計算をします。 たとえば、むち打ちで14級になった年収500万円の被害者の逸失利益は次のように計算されます。 年収500万円×0.05(14級の喪失率)×4.3295(喪失期間5年のライプニッツ係数)=108万2375円

 (参考)
ライプニッツ係数
5年  4.3295
10年 7.7217
15年 10.3797
20年 12.4622
25年 14.0939
30年 15.3725
35年 16.3742

知りたい方は、当事務所までご相談ください(無料で算定いたします。) * 加害者の保険会社が提示する逸失利益の金額をご確認ください。 通常は、労働能力喪失率を低く見るか、喪失期間を短くするか、基礎となる給与の額を低くするか、によって 裁判上の基準よりも低い提示がなされることが多いです。

初回相談料・着手金無料ですので、お気軽にご相談ください。0120-552-451

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