高次脳機能障害Q&A
Q.高次脳機能障害とはどのようなものでしょうか?
Q.MTBIと診断されましたが、高次脳機能障害を認定してもらえるのでしょうか?
Q.加害者に対する損害賠償請求の他に、受け取れる可能性のある補償はありますでしょうか?
Q.厚生年金の障害年金の申請は、どのタイミングでどのようにすれば良いでしょうか?
Q.高次脳機能障害は治るのですか?
Q.症状固定の診断を受けたくありません。今後、悪化することはないのでしょうか?
Q.高次脳機能障害とはどのようなものでしょうか?
Q 夫が、1ヶ月前に、交通事故の被害に遭いました。現在は、寝たきりで意識は回復していますが、もとのようには話をしたりすることはできません。医師の先生からは、高次脳機能障害が残る可能性が高いと言われていますが、高次脳機能障害とはどのようなものでしょうか?
A 低次脳機能障害という言葉があれば、それとの対比でわかりやすいと思いますが、低次脳機能障害という言葉は、一般的に使われないようです。
高次脳機能障害というのは、たとえば、半身不随のように、脳に後遺障害が残ったことにより、手足などの機能が麻痺したというような周囲の人から見てわかりやすい症状はないけれど、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、人格の変化、感情のコントロールができない、怒りやすくなった、物事を理解できないなどの症状が残った場合の総称をいいます。
高次脳機能障害の特徴は、多くのことは今まで通りできるのに、ある特定の能力ががくんと落ちていたり、一見普通に物事をこなしているように見えて、実はまったく今までとは違っていたり、と見落とされがちな症状でもあります。本人は、自分ができなくなったことについて、認識を欠いている場合が多いので、周りの家族などの人が注意していかないと、気がつかないこともあります。
Q.MTBIと診断されましたが、高次脳機能障害を認定してもらえるのでしょうか?
Q MTBIと診断されましたが、高次脳機能障害を認定してもらえるのでしょうか?
A MTBIとは、Mild Traumatic Brain Injury の略語です。つまり、軽度の脳外傷のことをいいます。
現状においては、自賠責では、MTBIを理由に後遺障害が認められてはいません(14級や12級の神経症状が認められることはあります。高次脳機能障害としてのより上位の等級が認められていないという意味です。)。
裁判上でも、多くの裁判例は、MTBIによる後遺障害を否定するケースが圧倒的に多い状況です。札幌高裁平成18年5月26日判決は、正面から認めた訳ではありませんが、MTBIを原因として、上位の後遺障害があることを認めた内容となっており、また大阪高裁平成21年3月26日判決も9級相当の後遺障害を認めており、場合によっては、脳損傷が画像から認定できない場合や、事故直後に意識障害がなかった場合にも、高次脳機能障害としての評価がなされたとみられるケースも出てきています。
しかし、原則としては、高次脳機能障害と認められるには、①画像から脳損傷が認定できること、②事故直後から意識障害があったこと、③症状固定時に症状が存在することという大きな枠組みは維持されており、今後の裁判例の推移に期待するところです。
Q.加害者に対する損害賠償請求の他に、受け取れる可能性のある補償はありますでしょうか?
Q 交通事故によって、頭部に外傷を負った結果、高次脳機能障害が後遺障害として残った場合に、加害者に対する損害賠償請求の他に、もらえる可能性のあるお金やサービスはどのようなものがありますか?
A 高次脳機能障害に限定したものではありませんが、障害が残っている場合に受けられるサービスや年金などがあります。
身体障害者手帳の認定を受けることができた場合は、各種税金の減額あるいは免除、各種公共交通機関の割引き、博物館、美術館、映画館などの各種公共施設の利用料の減額あるいは免除、電話料金、携帯電話料金など、通信費の減額などが受けられる可能性があります。
また、交通事故が勤務中などに発生した場合で、労災と認定されている場合は、労災の障害年金等を受給することができます。
さらに、厚生年金や国民年金の支払いをしていた場合には、一定の条件の下、障害年金を受けることができます(ただし、労災の障害年金を受給している場合は、厚生年金や国民年金の障害年金を受給する場合に、一定の調整があります。つまり、両者ともに満額の受領が必ずしもできるわけではないということです)。
Q.厚生年金の障害年金の申請は、どのタイミングでどのようにすれば良いでしょうか?
Q 交通事故で高次脳機能障害で自賠責等級1級に認定されました。長い間、会社に勤務しており、厚生年金の障害年金の申請が可能と聞きましたが、どのタイミングで申請すれば良いのでしょうか?また、どのように申請すればよいのかわかりません。どうしたらよいのでしょうか?
A タイミングとしては、障害基礎年金や障害厚生年金は、原則として、受傷時から1年半経過した時点以後にすることになります。
それから、交通事故の加害者に対する賠償請求権との関係では、交通事故の加害者との損害賠償請求について、示談が成立するか、裁判が終了してから障害基礎年金や障害厚生年金の申請をすることをおすすめします。
加害者との損害賠償請求の問題が解決する前に、障害基礎年金や障害厚生年金の受給が開始されると、すでに受領した年金の分について、加害者からの賠償金が減額される可能性があるからです。
Q.高次脳機能障害は治るのですか?
Q 高次脳機能障害は治るのですか?
A 高次脳機能障害を引き起こす脳損傷は、脳の神経細胞が失われたことによる結果です。
そして、一度、失われた脳細胞は、皮膚のように再び再生することはないと言われています。
そうすると、失われた脳細胞が担っていた役割は、もとに戻ることはないように思えますが、一定程度、他の機能を果たすはずの脳細胞が、失われた脳細胞が担っていた役割を代替して行うこともなされます。つまり、機能障害のある部分の脳細胞の役割を別の部分が肩代わりして行うこともあります。
ですが、完全に元通りになるかというと、そうではなく、当初の一年は回復が進と言われていますが、その後の回復はかなり穏やかなものとなり、時間が進んだとしても、劇的な回復は期待できないと言われています。
頭部に外傷を負って、高次脳機能障害が発生した場合の症状固定が通常は、1年から1年半程度とされることも、このような理由に基づいていると考えられます。
Q.症状固定の診断を受けたくありません。今後、悪化することはないのでしょうか?
Q 30歳の息子が、交通事故で脳挫傷、びまん性軸索損傷のけがをして、1年半が経過しました。医師の先生は、これ以上は良くなることは期待できないから症状固定にしましょうといわれています。ただ、今後、悪化するのではないかと心配してしまい、症状固定の診断を受けたくありません。今後、悪化することはないのでしょうか?
A 高次脳機能障害そのものは、後になって悪化することはないと言われています。
ただし、頭部に大きな外傷を受けた場合には、てんかんなどを合併させる可能性が出てきたり、寝たきり状態になった場合などには、内臓の疾患など、別の疾患を誘発する可能性はありえます。
このような、他の疾患については、そのような疾患が発生しないように医師の先生とご相談の上、対策をとる必要はあると思われますが、他の疾患が生じる可能性があることを理由に、高次脳機能障害の症状固定を遅らせることは難しいと思われます。
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