会社役員と交通事故

会社役員が交通事故の被害者となった場合には、通常の給与所得者と異なり、問題となる部分があります。

会社役員といっても様々な大きさの企業の役員がいますが、特に問題となるのは、家族や親族が経営するオーナー企業、同族企業の場合です。

① 同族企業の役員が、交通事故の被害にあって仕事を休んだ場合、理論的には休業損害が発生します

しかし、同族企業である場合、役員は社長の家族や親族であったり、また、社長自身が被害者であるときなどは、会社の仕事を休んだとしても、役員報酬そのものは減額しない扱いが多いと思われます。

これが、いわゆるサラリーマンで給与所得者であれば、休んだ分の給与は支払われないことになるでしょう。この場合、給料を減額されたサラリーマンは、加害者に休業損害を請求することができます。

それでは、仕事ができず会社を休んだ社長が、自分の報酬は下げなかった場合に、加害者に休業損害を一切請求できないのでしょうか?

答えは請求できます。

現実には、会社は仕事を休んだ役員にも通常と同じ報酬を支払ったことで、いわば加害者が被害者に支払うべき休業損害を会社が肩代わりしているにすぎないからです。

会社が報酬を減らすかどうかは、会社の事情にすぎず、加害者がたまたま被害者である社長が自分の報酬を減らさなかったことで、かえって得をするのはバランス上おかしいと言えます。

なお、この肩代わりの損害を保険会社は「企業損害」と呼んで払い渋る傾向にありますが、裁判であれば、一定の損害は認められます。企業損害には、いろいろありますが、請求するのが難しいのは、「会社の社長が一定期間仕事を休んだので会社の売上げが減少した」という場合です。

働いている人が一人や二人の会社であれば、これは認められる可能性があっても、30人いる会社であれば立証が難しい可能性があります。

② 休業損害や逸失利益の算定になる基礎収入をどうするか。

会社の役員は一般の従業員と比較すると報酬が高額であることが多いですが、厳密にいうと①労働の対価として受領している分と②利益配当として受領している分があるといわれます。

つまり、報酬が高いのは、その会社に出資している等の事情があるからで、その利益配当としてもらえる部分は、必ずしも現実に働かなくてももらえるのではないかと考えられるからです。

そして、休業損害や逸失利益は①の労働対価部分についてのみ発生し、②利益配当分は関係ないのではないかという議論がされています。

問題は、①労働対価分と②利益配当分をどのように分けるかですが、100%を労働対価分とした裁判例もあれば、50%としたものもあります。

ここは、明確な決まりがあるわけではなく、会社の規模、その役員の報酬額、他の役員の報酬額、オーナーは誰か、他の従業員の年収額など様々な要素により判断されるものです。


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